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第90話

* * * 朝起きると、百目鬼はもう布団にいなくて、ぐちゃぐちゃになっていた浴衣は綺麗に洗われていた。 起き上がるけれど、尻にまだ違和感はある。 腰は、大丈夫そうだった。普段からの鍛え方が違うからだ。 別にこっちの才能があるわけでは無い、と思いたい。 ふらふらと起き上がると椅子に座った百目鬼に「おはよう。」と言われる。 もう浴衣は着ておらず。さっぱりとしている。 「一人で風呂行ってきただろ。」 俺が言うと「まあ、そうだな。」と答えられる。 「いいなあ。」 俺は今日もう一回入ってから帰るは難しそうだ。 昨日鏡で見た自分の体は鬱血痕と噛み跡だらけだった。 さすがに誰かと出くわすと、気まずいなんてもんじゃない。 「俺も跡つけときゃよかった。」 そう言うと、「つけただろ?」と返される。 何の話だ。キスマークなんてつけた覚えがない。 俺が訝し気に見ていると、百目鬼が困ったように笑った。 無意識にどこかに吸い付きでもしただろうか。 「背中、爪立てただろ?」 爪は短く切りそろえて、引っかからないようにしていた。 つもりだった。 よろよろと百目鬼の元まで行くとTシャツの背中側の首元をグイっと引っ張る。 そこには割とくっきりみみず腫れがある。 「痛くねえのか、これ。」 しまったと思いながら聞く。 けれど、自分が残した痕跡に、優越感にもにた感情もある。 百目鬼も精々見せないように困ればいい。 「それよりも、着替えろ。」 朝食も部屋食だからな。 そう言われて俺が百目鬼のシャツ一枚だって事に気が付く。 履いてきたGパンと持ってきたTシャツに着替える。 布団を上げるのは百目鬼がやってくれた。

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