3 / 41

目覚め

目が覚めた男は、俺を見て目大きくを見開いた。 「う・・嘘・・准君!!」 俺を凝視して、驚愕している。 「・・?」 何に驚いているのか分からず首を傾げる。 男は口を抑えながら立ち上がり、その反動で椅子がガタガタっと音を鳴らした。 「え・・・あの・・」 どうすれば良いのか分からず戸惑った。 何故、彼は俺を見て驚いているのだろうか 男は俺の顔を見て硬直しているように見えた。 大きな瞳は黒目が大きく見える。 その瞳には涙が溜まっているのか、濡れて光って見えた。 「あの、あなたは」 誰ですかと言おうとすると、男がハッとしたように体を微かに震わせるた。 「せ、先生呼んでくるね!!あ・・違う!ナースコールすればいいのかな?!えっと・・あ・・どれだ!?」 ワタワタと両手を振りながらベッドの周りをウロウロし始めた 「あ・・これですか?」 ベッド横にあったコードの先にあるボタンを指さした 「あ、うん!それそれ!」 俺が指さした方向にあったボタンを見つけるとそれを握りしめ先端に付いているボタンを勢いよく連打した。 ピーピーと電子音が鳴った後に女性の声がした。 『はい、どうしましたか?』 男は身を乗り出してスピーカーらしきものに、顔を近づける。 「あ!あの藤堂・・じゃなくて雨宮です!あの、起きたんです!目が覚めたんです!!」 男がそう叫ぶと 『直ぐ行きます!』 向こう側でも慌てたような声が聞こえ、ブツッと通信が切れる音がした。 「・・・・・・」 (雨宮・・・?) 聞いたことのない名前に、また首を傾げる。 「はあ・・直ぐ来るからね・・」 男は、そう言って椅子に座り直すと俺を見た。 その目は涙が今にも零れ落ちそうなくらい溜まっている。 「准君、一か月も目が覚めなかったんだよ?」 目尻を手の甲で拭いながら言った。 「え?」 俺は男に言われた言葉の意味が分からなかった。 (一か月目が覚めなかった?) 先ほどのやり取りや、部屋の様子を見て、ここが病院なのは、何となく分かった。 反対側を見ると、確かに似たようなベッドが並べて置いてある。 そして、俺がいるベッド横には点滴らしきものが立てかけてあり、そこから伸びた細い管が俺の腕へ伸びていることに気づいた 「・・・なんで・・」 「准君、覚えてる?あのね・・事故に合ったんだ」 男が眉を顰め、今にも泣きそうな顔で言った 「事故・・」 事故にあったのか? いつ? どんな事故? 思い出そうとしても、何も分からない 「はあ・・でも、目が覚めてくれて良かった!」 男が、瞳を濡らしながら言うので俺は・・恐る恐る聞いてみた 「あの・・・」 事故よりも気になること 「うん?」 男が目を細めると、柔らかな微笑を浮かべる。 「あの・・あなたは・・誰ですか?」 「・・・・・え?」 だが、その笑みは一瞬で凍りつき男の表情が一変した さっきから、自分に対して慌てたり泣き出しそうになっているようだが、その顔に覚えはない。 全くの他人だ。 「しゅ・・准君?」 強張った表情のまま、俺に手を伸ばす。 (まただ・・) さっきから、気になっている事がまだある。 「それと、しゅんと言うのは・・誰のことですか?」 「え?」 俺の言葉に、さらに目を見開いた。 俺は雨宮と言う名字も准と言う名前も知らない。 「な・・何を言ってるの?」 目を見開いた顔が、今度は戸惑いの色を浮かべた (コロコロと表情が変わる人だな) 「ねえ・・自分の名前・・言える?」 男が、震えそうな声で言った (俺の名前?) 「あ、俺は・・」 そう言えば、俺の名前は、何だったか・・ 思い出そうとするが、名前が出てこない。 「俺の名前は・・」 分からないはずないのに言葉が出てこなかった。 「・・・分からない・・」 俺は・・誰だ? 頭に靄が掛かったかのように、名前が出てこない。 「そんな・・」 男は、そんな俺を見て体を硬直させていた

ともだちにシェアしよう!