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ベッド

「嘘つくなよ」 辛さで舌がヒリヒリする。 「へへ・・記憶無くしたら、味覚も変わるのかな~って思ってさ」 やっぱり、変わらないかーと笑った。 「・・・・・」 何かを確認したかったのか?それとも、深い意味はないのだろうか? 「辛いのは苦手だってことは、分かったよ」 側にあったコップに入った水を一気に飲み干した。 かなり辛かったが、それでも藤堂の作った麻婆豆腐は美味しかった。 「無理して全部食べなくていいからね!」 「いや、辛いけど美味しいよ」 麻婆豆腐を完食したころには、水を三杯は飲んでいただろう。 「はあ・・なんか・・久しぶりに食べたな・・」 お腹が張り裂けそうなくらい満腹だ。 「そう言えば!ずっと寝てたんだよね!ヤバい・・お粥の方が良かったかな!?」 「いや・・今更だから(笑)」 それは、作るときに思い出してほしかったよ 腹が満たされると、今度は眠気が襲ってきた 「ふぁ~・・」 座り心地の良いソファに座り背伸びをしながら欠伸をすると 「今日は色々あって疲れたでしょ。そろそろ寝ようか?」 俺の様子を見た藤堂が、柔らかな笑みを浮かべながら言った。 「うん・・そうだね」 久しぶりに歩いたし、情報も沢山で頭が疲れている気がする。 「お風呂入る?」 「ああ・・いや、顔洗って寝る・・」 風呂に入る気分じゃないと思った。 「・・・そうだね・・准君は朝風呂だったからね」 「え?・・そうだったのか」 やはり記憶が無くても習慣は覚えているものなのかもしれない。 洗面所で顔を洗い歯を磨いてリビングに戻ると、着替えを渡してくれた 「これ・・准君が着てたパジャマだよ」 「ほんと、尊がいなかったら途方にくれていたな・・ありがと・・」 渡されたのは着心地がよさそうな濃茶の寝間着だった。 受け取ったパジャマを持ち隣のベッドルームのドアに向かう。 (尊はどこで寝るのかな?) そう思いながらドアを開ける。 「ん?」 すると、後ろから藤堂がついてきた。 「うん?」 「え?」 首を傾げる俺に、藤堂も首を傾げる。 「どうしたの?」 「いや・・だから寝ようかなって思うんだけど・・」 「うん、俺も寝る」 「・・えっと・・」 部屋を見るとベッドは一つだけだ。 「ほら、枕は二つ」 そう言ってベッドを指さした 確かにベッドに枕は二つだった 「もしかして・・・一緒に寝るって事?」 振り返り藤堂を見ると、満面の笑みを浮かべて頷いた 「だって、ずっと一緒に寝てたからさ・・」 「は?」 一緒に寝ていた? それは彼がここに頻繁に泊まりに来ていたという事だろうか? 俺と彼はどこまで親しかったんだ? 「一緒に寝るのは・・まあ別にかまわないけどさ」 見る限りではベッドはセミダブルくらいの大きさだし、男二人でも寝れるとは思う。 「でも、准君が嫌ならさ・・俺ソファで寝るよ?」 眉を下げ寂しそうな顔をした。 「・・いや、以前どおりの方が良い」 その方が、記憶が戻るきっかけになるかもしれない。 「うん!そうだよ!きっかけになるかも!」 一瞬で嬉しそうな顔に戻った。 それからパジャマに着替え、布団に入るとスェットに着替えた藤堂もモソモソと布団の中に潜りこんでくる。 俺は気まずさを感じて、藤堂に背中を向けるように横向きになった。 「あ・・」 その瞬間、藤堂の手が腰に巻き付いてきてビクッと体が跳ねた。 「いつもね・・こうやって寝てたんだよ」 「ほんとに?!」 それも、嘘じゃないのか?!

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