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・・・・ずっと・・・ずっと好きだった・・・ 君の笑顔が好きだ だから・・ 『これ・・美味しいね』 「ああ・・そうだね・・」 2人で向かい合って座り 人気のフレンチのレストランで食事をする 君の笑顔に胸が締め付けられる 俺を見る眼差しに熱を感じる度に息が吸えなくなりそうになる。 「隠さなくても、良いんだよ」 誰かが言った 「准の気持ちが知りたい」 若い声のようだが、それが誰の声なのか思い出せない 「俺の気持ちは・・」 この気持ちを知ったら、君は受け入れてくれるのか? いや・・ そんなの・・・ 『准、今日の夕飯は何にしようか?』 「・・・・そうだな・・・」 麻婆豆腐が・・・食べたいな・・・・ 「んっ・・・・」 ふと、体を締め付ける感覚に目が覚めた 「・・・あ・・・」 目を開けると、カーテンの隙間から光が漏れている (朝・・か・・) 起きようとした時、胸に巻きつく腕に気づいた 「・・・尊」 後ろを振り返ると、口を半開きにして寝る藤堂の顔があった。 胸に巻き付く腕は細いが、筋肉がちゃんと付いている。だが頬は、こけていてやつれて見えた。 (俺の事で・・苦労させちゃってるよな) しかも、自分の姉まで亡くしているのだ。心情は複雑だろう。 胸に巻きつく腕を起こさない様に解き、ベッドから下りた。 窓に近づきカーテンを少し開ける。 温かい日差しに目を細目た。 「はあ・・」 夢を見ていたのは覚えている。 誰かと食事をしていたが、その相手が誰かは分からない。 目の前にいるはずなのに顔は見えなかった。 そして、誰かの声 何を言われたのか目が覚めると同時に忘れてしまったが、その言葉に胸がざわついた感じがした。 「っく・・誰だ・・」 忘れてはいけない人のような気がする。 顔を思い出そうとしても、靄がかかって・・思い出せない。 忘れちゃいけない人なのに・・。 「ん・・ん~・・」 背後でゴソゴソっとシーツの布ずれの音がして後ろを見ると藤堂が寝返りをうった。 「・・・・・・」 あの人は・・彼だったりして・・ 「いや、まさかな・・」 女だった気もするし もしかしたら藤堂のお姉さんかもしれない。 「はあ・・」 ダメだ・・考えても思い出せない 藤堂が起きたら写真を見せてもらおうか。 顔を見れば少しは思い出せるかもしれない。 「ん・・・准君?」 「あ・・ゴメン起こした?」 振り返ると、を擦りながら起き上がった 「ううん・・」 顔を小さく振るとベッドから下りて俺の前に来た 「へへ・・っはよ」 いつもサラサラの髪は寝癖で少し跳ねている 「うん、おはっ!」 突然ギュッと抱きしめられ、驚きに声が詰まった 硬直していると、俺の胸に顔を埋め大きく息を吐いた。 「はあ・・准君が起きてる・・」 「・・・・・」 彼の言葉に肩から力が抜ける。 「ちょっと・・不安だった・・起きなかったらどうしようって・・」 「・・心配かけてゴメンな」 彼の背中を撫でながら言うと、胸に顔を埋めたまま小さく頷いた。 一か月・・ 彼はどんな気持ちで目を覚ますのを待ってくれたのだろうか。

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