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「では、江角さんも尊とはお知合いなんですね」 「そうだよ・・あれから、二人で飲むこともあったしね」 流石に前の事務所で何があったかは話せなかったが、俺たちの出会いや、依頼者に親身になる彼の仕事の様子。 そして藤堂さんとの出会いを説明した。 「その、俺を江角さんに紹介してくれた友人は・・」 「ああ、彼は今度連れてくるよ・・凄く心配していたしね」 准とは親しい関係だったし、事故の後、何度も見舞いに行っていた。 記憶を失ったと聞いたら、俺と同様に驚くだろう。 「色々教えていただき、ありがとうございます」 そう言って頭を下げる准に藤堂さんへ向ける笑みを思い出す。 今の准は彼にたいする気持ちも全て忘れてしまった。もう、あの笑顔を見ることもないのだろうか いや、いつか記憶が戻る可能性もある。 だが、記憶が戻っても、やはり笑顔は見れないだろう。 「あの、仕事の事なんですが・・あの・・」 眉をしかめ、申し訳なさそうな顔で聞いてきた。 「ああ、さっきも言ったけどさ、仕事の事は考えなくていいよ。とにかく今はゆっくり体を休めなよ」 「ありがとうございます」 「うん、暫くは藤堂さんに任せて、無理しないように」 正直どこまで話せば良いのか迷った。 以前の准は、間違っても尊なんて呼ばなかった。 そして全てを諦めていた。 いや、諦めていなかったから藤堂さんのお姉さんと付き合っていたのかな・・ 今となっては、彼の本意は分からない。 「尊とは、ずっと仲が良かったんですね」 思い出せないことへの辛さでだろうか、眉を寄せて溜息をついている。 「ねえ、藤堂さんに言われたの?尊って呼んでって・・」 「え?あ・・はい」 「そっか」 だよね・・じゃなきゃ名前で呼ばないよな 「あの・・俺、尊って呼んでいなかったんですか?」 首を傾げながら聞いてくる准に 「いや、呼んでいたよ」 とりあえず、そういう事にしておいた。 「そうですか」 恐らく、藤堂さんは、自分の姉と准の関係は話していないだろう。でなければ、こんなことしない筈だ。 准には災難かもしれないが、記憶を無くしてしまって、ある意味良かったのかもしれない。 これで、全てリセットされたのだから。 最初からやり直せばいいんだ 藤堂さんとの関係を 今度は間違いのないように・・ 「はあ・・今日は帰るよ」 「え?帰るんですか?」 ソファから立ち上がると、俺を見て不安そうな顔をした 「ゴメンな・・仕事があってさ」 柔らかな髪に手を伸ばし優しく撫でた。 俺の手を拒むことなく、目を伏せる。 「・・また、来てくれますか?」 俺にされるがままな准に、鼓動が速くなってきた。 こんな風に触れる日が来るとは思いもよらなかった。 「うん、また来るよ」 髪から、頬に手を滑らせ顔の輪郭をなぞって手を離した 「ありがとうございます」 少しくすぐったそうに首を傾げ微笑んだ (・・ヤバいな・・) そんな顔されたら・・味方でいられなくなりそうだよ

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