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・・それで・・良いの?・・・ 声が聞こえる ・・・・後悔しないの?・・・ 若い男の声だが、誰の声か思い出せない 『後悔しない・・』 目を凝らして声をのする方を見るけど、白い霧に覆われて人影しか見えない ・・伝えれば良いじゃないか・・ 答えは分からないだろ・・・・ どこかで聞いたことのある声だと思ったが、やはり思い出せない。 『良いんだ・・これで良い・・・こうすれば・・』 ・・・ずっと側に居られる? 『見ているだけでも・・良いんだ』 俺は頷きながら言った。 自分に言い聞かせるように・・ そんなの・・ そんなの、辛いだけじゃん! 「っ!」 誰かの叫びで目が覚めた。 (夢・・) 聞き覚えのある声だったが、顔も見えず、それが誰なのか思い出せない。 (江角さんじゃなかっな・・) 体を反転させて、俺の横で眠る尊を見た。 (尊の声でもなかったな・・) 「ん~・・へへ・・」 不意に、尊の口許が緩む 「・・笑ってる・・」 人って、眠ってる時も笑うんだな 尊の頬を撫でると、また唇に笑みを浮かべた。 「へへ・・」 「どんな・・夢見てんの?」 思わず苦笑してしまった。 昨日は病院から帰ってきた俺を凄く心配してた。 記憶は戻りそうなの?と何度も聞かれ、俺が小さく首を降ると、どこか悲しげな顔をした。 早く思い出してやらないと 彼の為にも (前の俺は・・どんな人間だったのかな) 好きな料理は? 趣味は? 思えば、俺の日常のことは彼から何一つ教えてもらっていない。 (明日聞いてみよう) 前の俺は、どういう人間だったのかを。 このマンションの部屋もなんだか殺風景で、自分が見えてこない。 俺の写真もないし友達の写真も無い。 本棚は法律関係の本や小説もあったけど・・ でも、どこか作り物のような気がしてならなかった。 「准く・・・」 「ん?」 名前を呼ばれて、ハッとした。 起こしてしまったかと尊の顔を凝視したけが 「はあ・・」 その目は閉じられたままだった。 (寝言・・か) 寝言で俺の名前を呼んだということは、 「俺の夢見てんの?」 尊の鼻先を指でつついた。 「んー」 また笑っている。 昔の俺の夢を見てるのかな・・ 記憶を無くす前の俺の夢を 「・・・・・・」 そっと、尊の手を握った 指を絡めると、彼の指にも力が籠る 「嫌じゃないんだよな」 (・・男なんだけどな・・) 一緒に寝るのも変だと思うんだけど、でも拒む事はできなかった それどころか・・こうして彼に触れてると安心する。 彼の為にも・・早く思い出してやりたいな 手を握りしめ、また目を瞑った それから、俺はまた夢を見る 暗闇の中・・ 遠くから声が聞こえてくる ・・・・そんなの辛いだけじゃん・・・・ ・・・准は・・逃げてるだけだ・・・ その声の主が誰かは分からないけど・・ 逃げていると言う声に、納得している自分がいた。

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