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「充・・・俺、事務所止めた・・」 念願の弁護士になり、有名な事務所に入って間もない時 准は、眉間に皺を寄せて唇を噛みしめながら俺の所に来た。 「辞める?マジで言ってる?」 あんな大きな事務所に入れたのは、奇跡に近いと言って喜んでいたのに・・ なぜ?と准を見ると、眉をしかめて説明した。 ある日、事務所の先輩に飲みに誘われ 強い酒を飲まされて酔い潰された准はいつの間にホテルに連れ込まれたらしい。 その後は、お決まりの展開だ。 上に伸し上がられた所で目が覚めたらしく、未遂に終わったらしいが 話を聞き、怒りしかなかった。 「・・最初から、スキンシップが多い人だなって思っていたんだ・・」 「はあ・・先輩からベタベタ触られたら変だと思わなかったわけ?」 「思わねーよ・・女じゃないんだから・・」 女じゃなくても、准はそういう対象に見られるんだよ! 「はあ・・何もされてないんだよね?」 「うん・・思いっきり突き飛ばして逃げてきた」 「訴えないの?」 「訴える分けないじゃん・・相手も弁護士だよ?同意の上で酒を飲んで酔いつぶれた俺を介抱した・・そう言われれば、終わりだよ」 悔しそうに眉をしかめている。 「泣き寝入りするつもり?」 「・・別に・・泣き寝入りするまでの事されてないから・・」 そう言って、溜め息をつくと「それに・・」と言葉を続けた 「それに?」 「気持ちは・・分かるから・・」 「は?」 何の気持ちが分かるって言うんだ? 「・・先輩・・俺の事好きだって言った」 「・・・・・・」 「男を好きになる気持ち・・・分からなくないからさ」 「・・分からなくないにしても・・その先輩のしたことは最低だし気持ちなんて分かってんじゃねーよ!」 好きだから何しても、犯罪おかしてもいいってことにはならないだろ そんなところで相手に同情なんてしてほしくない。 「・・・・充」 悲しそうな顔で俺を見た。 准は・・ 大学時代から、ずっと恋をしている 一人の男に・・・ ・ 「あの、充さんは何飲みますか?」 「充で良いよ」 「あ・・はい・・」 遠慮がちな物言いと、視線を外す仕草に初めて会ったころの准を思い出す。 でも、あの頃よりも、その表情は柔らかい 「じゃ・・充・・へへ・・なんか照れます」 頭を掻きながらはにかむ こんな風に笑う准を見るのは久しぶりだ。 思えば、あいつに恋をして、准は、いつも苦しんでいた。 苦しむくらいなら、諦めればいいのに、それもできないほどの想い 「俺コーヒー飲みたいな」 「分かりました!」 嬉しそうにキッチンに行った。 「・・・・」 好きで・・でも気持ちを伝えられなくて 辛いなら、気持ちを伝えろよって言っても 『・・無理だよ・・彼に嫌われたくないんだ・・』 誰しもが振り返ってしまうほど綺麗なのに・・ 自分の事に関しては、本当に臆病な人だった 一歩踏み出せばいいのに・・そう思っていたら 准は間違った選択を選んでしまったんだ。

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