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暇潰し

「じゃ・・暇つぶしを置いていくからさ・・こいつで遊んでやってよ」 俺の淹れた珈琲を飲み干すと、立ち上がりながら言った。 「え?」 「暇つぶしって・・」 充が、苦笑する、 「充も暇だろ?」 頼んだよと言って江角さんは、帰っていった。 「・・忙しいのかな・・」 弁護士だし、俺は仕事ができないわけだから単純に考えても人員が減ったことになる。 「まあ、一応経営者だしな」 フッと短く息を吐きながら笑うと俺の淹れたコーヒーを一口飲んだ。 「・・充・・・」 「うん?」 「・・・いや・・思い出せなくてゴメン」 名前を口にしても、何も感じない。 「准は何も悪くないんだから謝らなくていいよ」 眉を下げながら言う彼に、胸が痛んだ。 仕方のないことなのだが、何も覚えていないことが凄く薄情な事に思えてならない。 「もう!変な顔しない!」 「え?うむ!!」 急に頬を摘ままれた。 「そういう所は、変わらないな」 口角を上げながら笑うと手を離した 「・・俺って、どんな人だった?」 頬を押さえながら充を見た。 「うん、優しくて、ちょっと臆病で・・でも芯のある人だった」 目を細目ながら俺を見た。 「・・・・・・」 「それに、自分の事より、相手の事ばかり考えてたよ」 「そうなの?」 俺って・・そんな奴だったの? 「もっとさ・・・ズルく生きればいいのにな~って思ってた」 両手を上げて大きく背伸びをするとテレビのリモコンを手に取った 「さてと・・暇つぶしの役目、はたしますかね」 「え?」 テレビのスイッチを入れると、俺を見てニヤッと笑った ・ 「あ!ちょっと!ズルい!!」 テレビの前に二人ならんで座り、俺はゲームのコントローラーをガチャガチャと動かしていた。 「ズルくない、勝負とはこう言うもんだ」 充は、余裕の笑みを浮かべている。 「うわ!待って!たんま・・あああっ!」 声をあげた瞬間、テレビ画面にゲームオーバーの文字が浮かび出た。 「はあ・・もう~・・強いよ~」 一気に体の力が抜けてコントローラーを投げて床に寝転んだ 「ゲームの下手さも前と変わらないな」 「・・はあ・・そこは変わっても良いのにな~」 「変わったらビックリだな」 ハハっと声をあげて笑うとコントローラーを操作して、またやり始めた あれから、暇潰しと称してゲームをやっていた。 ゲーム機は充が家から持ってきたものだ。 一時間ほどやっていたが、充が 強すぎて全然勝てない 「・・充はゲームが好きなの?」 「フフ・・これが俺のお仕事ですからね」 「え?」 仕事? 意味が分からず起き上がり首をかしげた。 「俺、ゲーム会社を作ってんだよ」 「へえ!?」 「まあ、趣味が仕事になったって感じ」 「じゃ、俺が勝てるわけないじゃん!」 本職の人ってことだろ? ブーっと唇を尖らせながら言うと 「フフ・・だから、簡単には勝たせないからな」 勝ち誇った顔で言われた。

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