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泣きたくなる理由

「ねえ、尊と充って・・仲良いんだね」 「あ・・うん、そうだね・・」 充が帰った後、残った寿司を肴にビールを飲む。 トロやウニは充が全部食べてしまい、残っているのは、玉子やイカ、かっぱ巻きぐらいだった。 「准君がね、紹介したいって言って俺がバイトしている店に連れてきてくれたんだよ」 「それは、俺が大学生の時?」 「そうだよ~二人で俺の作ったカクテル飲んでね・・あ!今度、カクテル作ってあげるね」 そう言って、笑顔を向ける尊に胸の奥が締め付けられる感覚がした。 (この気持ちは・・何なんだろう) 苦しいような・・でも、心地よいような・・ 言葉では言い表せない感情に戸惑ってしまう。 「充、来てくれて良かったね」 「あ・・うん」 尊の笑顔に、また胸が締め付けられた。 「充と准君はね、本当に仲が良かったんだよ・・ずっと一緒だったしね~」 「へえ・・でも、今日一日一緒にいて楽しかったよ」 「記憶が無くてもさ・・体が覚えているのかもね」 「・・・そうだね」 そうかもしれない 今感じている胸の苦しみも 記憶を無くす前の俺の感情なのかもしれない (でも何故・・) まるで恋でもしているかのような感じだと思った。 ・ 夜・・ 狭いベッドの中で尊の体温を感じると泣きたくないのに目頭が熱くなる 「ふー・・准・・」 「っ!?」 また・・俺の名前を呼んでる ドキッとして尊の方に寝返りをうつと 「あ・・・」 尊の目から涙が零れていた。 (なんで・・泣いてるの?) 頬を伝う涙をそっと指で拭った 「尊・・」 早く記憶を取り戻したい・・ 尊・・俺達って、どんな関係だったの? 君のお姉さんの話しも、もっと聞きたいのに いつも、はぐらかされてしまうんだ。 亡くなった悲しみで思い出したくないからなのかもしれない。 俺の所為で・・亡くなってしまったから教えたくないのかもしれない 「はあ・・」 充に聞けば、教えてくれるだろうか・・ ・ 『ねえ・・准・・・』 『・・・・・私と一緒にいて・・・准は楽しい?』 なんでそんな事聞くんだ 『・・准・・・』 彼女の声は・・優しくて その笑顔は尊によく似ている 僕は・・君を利用している卑怯な男だ 『・・そう言えば、尊がね・・』 彼女の口から彼の名前が出るだけで胸の奥が締め付けられる ・・准は・・ 逃げているだけだ・・・・・ こんなの・・・彼女にも失礼だよ・・・・ 充の声が聞こえて目が覚めた 「はっ・・・」 部屋はまだ暗かった。 目尻を指で拭うと、泣いていたことに気づいた。 (ああ・・イライラする・・) なんなんだ・・ 目が覚めると同時に、何の夢だったか忘れてしまったが、苛立ちの感情だけが残っていた。

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