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カウンセリング

翌日 「今日は病院行く日なの?」 朝食を済ませ、食器を洗っていると、尊が後ろから手元を覗き混みながら聞いてきた。 「うん・・カウンセリングを受けにね」 「なんだっけ・・三枝先生?」 「うん、良い人だよ」 振り向きながら頷くと 「・・今日は、一緒に行けないけど、今度俺にも会わせてくれる?」 不安そうに眉を潜めた。 「え?・・ああ、勿論!」 「じゃ、気をつけてね」 ホッとしたように、笑みを浮かべた。 尊は今日も仕事だ。 俺がアイロンをかけたワイシャツを着て仕事に行く。 「准君って、アイロン掛けるの上手いね!」 シャツを撫でながら言った。 「うん、自分でも上手いな~って思った」 きっと、アイロンは自分でかけていたんじゃないかと思う。 独り暮らしが長いからだろう。 弁護士なら毎日ワイシャツを着ていただろうし 「じゃ、行ってくるね!」 「あ、尊!ハンカチ!」 玄関に向かう尊を追いかけハンカチを渡した 「あ!・・ありがと」 それを受け取った尊は、満面の笑みを浮かべ仕事に向かった。 ・ 病院まではバスで向かう バスに揺られる事30分・・昼間のこの時間バスに乗っているのは中年の人ばかりだ。 尊に買ってもらったICカードで料金を払い、バスを降ると中年女性や年寄りの殆どが一緒に降りた。 おそらく、皆同じ病院に向かうのだろう。 周りより年が若いからだろうか、俺とすれ違う人が俺をチラチラ見ていくのが気になった。 ・ 「あの・・俺の顔って何か変ですかね?」 「はい?」 向かい側に座った三枝先生が首を傾げた。 「なんかすれ違う人、すれ違う人俺の顔を見るんですよ」 何か気になることがありますかと聞かれたので、今日の気になったことを聞いてみた。 「ああ・・それは・・」 途端に眉を八の時に下げながら頭を掻いた。 「いや、雨宮さんの顔が変って事じゃないと思いますよ?」 「そうですか?」 でも、俺が見ると皆視線を反らすし、明らかに俺を見ていたと思う。 「フフ・・それは雨宮さんが、とてもお綺麗だからですよ~」 後ろから声が聞こえ振り返った。 「え?」 すると、お盆にコーヒーカップを乗せて看護婦の三藤さんが現れた。 「うん・・それだよ。思わず振り向きたくなっちゃうよね」 三枝先生も大きく頷く。 「は?」 「ほんと・・雨宮さんはお綺麗ですもん」 はあ・・と溜め息をつきながら俺の前にマグカップを置いた。 「こらこら、三藤さん!」 三枝先生に窘められ、すみません・・と肩をすくめながら奥の部屋に戻ってしまった。 (俺って、どう思われているのかな?) 「さて・・どうですか?」 三藤さんが居なくなるのを待って三枝先生が椅子に座り直し、テーブルに肘をつきながら聞いてきた。 「え?どうとは・・」 「生活で困っている事はありますか?」 ニコッと微笑む先生に俺は、これまでの事を話した 江角さんの事 充と言う友人が来てくれたこと そして尊の事 「彼と一緒にいると・・不思議な気持ちになるんです」 俺の話を先生は相槌を打ちながら聞いてくれた。

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