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トキメキ(三枝)

「あ!!」 「え?」 テーブルに置いた携帯がバイブ音を鳴らした瞬間三枝は声をあげてしまい 三枝の向かいに座っていた患者と、ちょうどお茶を持ってきた三藤が驚いて三枝を見た。 「あ・・いえ、何でもないんです、ちょっとすみません!」 慌てて携帯を手に、隣の部屋に駆け込んだ。 「ふう・・落ち着けよ俺!」 大きく深呼吸をしてスマホを開いた。 登録されていないアドレスからのメール。 それは、考えるまでもなく、雨宮からだと思った。 「っく・・・」 早速メールをくれた喜びに三枝は小さくガッツポーズをしていた。だか、直ぐに我に変える。 (何で、俺は浮かれてるんだ!) 医者として、彼の相談相手になるためにメルアドを教えただけだ 別に、下心とか無いんだからな! そう自分に言い聞かせて、メールを開いた。 そして、送られてきたメールを見て大きく息を吐いた。 「はあ・・」 律儀なメールの内容に息を吐いた。 (良い人なんだよな・・) 笑顔が素敵で話す言葉づかいも丁寧・・ 生い立ちを見ると、恵まれた環境ではないが、それでも大学に行き弁護士になった彼は凄いと思った。 彼の人柄が、その笑顔に滲み出てる気がした。 三枝は自分の胸を押さえた。 心臓がドクドクと脈打っている。 (って・・俺は女子中学生か!) 「コホン・・返事を送らないと」 直ぐ送らなければ、彼も不安になるだろう。 『早速、ありがとうございます。 今日はとても楽しかったですね 今度、食事でも・・』 そこまでメールをうち、手を止めた。 (いや、食事に誘うのは早すぎか!?) 「うん、だよな・・」 食事の部分を消して、『困ったことがあったら直ぐに連絡くださいね』と入力した。 「送信・・っと!」 送信ボタンを押した時 「櫻井先生!患者さん不安がってますよ?」 三藤がドアをノックしながら言った。 「あっ!今行きます!」 慌てて携帯をポケットに仕舞い部屋を出た。 「すみません!」 「もう・・どうしたんですか?」 眉をしかめて三枝を見る三藤に笑って誤魔化して診療室に戻った。 ・ その日、三枝はずっと雨宮のことを考えていた。 彼に、何があったのか・・ 記憶を失うほどの衝撃なこととは そして、尊という男とどういう関係 確証はないが、予感を感じていた。 記憶を失った原因にその男も関わっているのではないかと もし、もしも彼の存在が 「・・雨宮さんを苦しめているのなら・・」 その時はハッキリと言ってやらなければいけない・・そう思った。 だからこそ、不安だ。 一緒に住んでいるらしい彼がずっと側に居たら・・ 今後も彼を苦しめることになるかもしれない

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