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自分の気持ち(三枝)

一人暮らしの生活は気楽でもあるが、年を重ねていくと、どうにもならない寂しさを感じることがある。 ひと肌恋しいと思うことや、日々の生活を共有できない寂しさ。 両親と一緒に暮らしていた時、一緒に出掛けることなど、無かったのに 仕事が終わり部屋に帰る度に感じる虚しさと寂しさを三枝は日々感じていた。 だが、彼は見た目は悪くないし性格も良い方だろう。 しかも職業は医者だ。恋人を作ろうと思えば直ぐに見つかるはずだ。 現に病院の看護婦に飲みに誘われることもしばしばだ。 だが、この人だ・・と思える人に出会えず、かといって、とりあえず付き合ってみるような関係には抵抗があった。 患者に恋も良いものだと諭すことはあったが、本人は恋愛に関しては、億劫になっていた。 そんな三枝に久しぶりに芽生えた感情。 それの感情には本人も驚いていた。 仕事が終わり、マンションに帰ると、着替えもせずにスマホを開く。数分置きに何度もだ。 それは、挨拶程度のメールなのに、そのメールを読むだけで彼の顔を思い出し胸の奥が締め付けられる感じがした。 それは、ま初恋の様だと思った。 芽生えた気持ちは、萎むことなく逆に日に日に膨らんでいく まさか、患者 しかも男性にこんな気持ちになると想いもよらなかった。 「はあ・・」 スマホをテーブルに置き、冷蔵庫から缶ビールを取り出した。 今度はいつ診察に来てくれるだろうか もしかして今度来るときは、「藤堂尊」も来るかもしれない。 もしかしたら・・の予感が何度も頭を霞める。 そして、心の奥に不安が芽生える。 もしかしたら、藤堂尊も自分と同じ気持ちなのではと。 だが、直ぐに思い直す (いや、まさかな) 「自分の姉が亡くなって・・事故に巻き込んだことへの責任かもしれないしな」 缶ビールの蓋をあけ一気に喉に流し込んだ、その時 prrrr~~♪ テーブルに置いた携帯が鳴り 「ゴホ!!」 思わずビールを噴き出してしまった。 きた!と心のなかで叫ぶ。 「ゲホ・・ゴホ・・ああもう!」 吹き出したビールが床に零れ、それを跳んで避けながらテーブルに向かった。 そして、スマホを開いた瞬間 「やっぱり!」 ドクンっと心臓が大きく脈打った。 「雨宮さん・・」 もしかしたらと思ったが、またメールをくれるとは思わなかった。 急いでメールを開くと 『夜遅くすみません 急ですが、明日もカウンセリングをお願いしてもよろしいですか?』 「よっしゃ!良いに決まってますよ~!!」 思わずガッツポーズをした。 急いで、大丈夫です、ぜひ来てくださいと返事を打つと、また直ぐにメールが着た 『良かった! では、明日行きます!ありがとうございます』 「明日も会えるのか・・」 (そうだ・・せっかくなら、午前の最後の時間にして、そのままランチに誘ってみよう) 下心ありありなのは自分でも分かっている。 だが、芽生えてしまった感情を抑え込むことができないほど、三枝は雨宮に心を奪われていた。

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