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第6話
「…気持ち悪かったんだろ。体調悪い時に吐くのは仕方ない」
先生は気づいていない体を装い、手早くそこを掃除する
この人は知っているのだ
俺が他のαに抱かれたことを
「…先生」
「どうした」
「…ごめんね」
「何」
「俺の体、汚れちゃった」
辛くて苦しくて、胸が張り裂けそうに痛いのに不思議と涙は出なかった
「こんな必死に守って馬鹿みたい。先生にはもう振られてるのにね。いっそ、あいつらの番になれば良かったのかな」
熱に浮かされた頭で頸だけは自衛したのだろう
首輪で頸は隠されているというのに、俺は手で首を守っていたようだ
あいつらはそんな俺を面白がって態と首筋を噛んだに違いない
俺の手はあいつらの噛み跡でボロボロだった
その後部屋に入ってきた保険医に診てもらい、異常が無かったので寮に戻ることとなった
ベッドから降りようとする俺を保険医が止め、薬を手渡してくる
見慣れぬ薬に保険医の顔を仰ぎ見ると、保険医は言い辛そうに避妊薬とその効果について話してくれた
記憶にはないが、あいつらに腹の中にも好き勝手出されたのだろう
この薬で俺の体も浄化されればいいのに
俺は迷わず薬を飲み込んだ
しばらく休みをもらい久しぶりに登校し教室に向かうと、俺の噂は広まっているようであっという間に野次馬が集まる
こんなことで負けてたまるか、と気丈に振る舞っていたが野次馬の1人のαと目が合いそんな虚勢も崩れ去った
心臓がドクドクと脈打ち息が苦しくなる
上手く息が吸えなくて踞るが、息苦しさは酷くなるばかり
目を閉じるとあいつらの手が俺の体を弄る感覚がして体を掻き抱くが消えてはくれない
「小川!」
酸素が足りなくなり薄れていく意識の中、俺に駆け寄る先生の姿が見えた
「っ、だめ、触らないで、汚れちゃう、」
それが先生に伝わったかは、意識を失った俺には分からなかった
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