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『修復』
それは突然のことだった
「お帰り、なさい…?」
鍵を開ける音がして、いつものように拓馬さんを出迎えると拓馬さんの隣に見慣れない子どもが居たのだ
「えーっと、とりあえず上がろうか」
拓馬さんの気まずそうな顔と、拓馬さんそっくりな男の子の顔を見て何となく察した
この子は多分、拓馬さんの前妻との子どもだろう
「俺、穂積。君の名前は?」
「…康平 」
「康平くんね。何歳?」
「9歳」
「ご飯は食べた?」
俺の質問にポツポツと答えてくれる康平くん、ご飯を食べていないと言うので拓馬さんのおかずを少し分けて2人の夕飯を準備した
立ちすくむ康平くんを椅子に座らせてやり、一緒に食べ始める拓馬さん
その隣で緊張したようにご飯を食べる康平くんを見ていられなくなり、俺も椅子に座って康平くんに話しかけた
「美味しい?」
「…うん」
「良かった。拓馬さんピーマン好きだから、少し多めに入れちゃったんだ。ピーマン食べられるなんて、康平くんは大人だね」
康平くんは俺の言葉にここにきて初めての笑みを見せてくれた
似ているな、とは思っていたけれど笑顔まで拓馬さんそっくりな康平くんに俺も笑みを返す
「あのね、それでね、」
康平くんは元々お喋りな性格だったようで、緊張が解けると俺にたくさん話をしてくれた
ほーちゃん、ほーちゃん、と俺の名前を呼び学校での話をしてくれる康平くんに相槌を打っていると、今までお利口に寝ていた晴希と晴翔が起きてしまったのか泣き声が聞こえてきた
「ちょっとごめんね」
康平くんに断りを入れて寝室に向かうと真っ赤な顔をして泣く2人の姿が
順番に抱き上げあやしていると何やら視線を感じる
視線の感じる方へ目を向けると、扉に隠れるように康平くんが中を覗き込み様子を伺っていた
「康平くん?」
「…赤ちゃん、2人居るの?」
「うん。抱っこしてみる?」
俺の言葉に康平くんは照れたように笑うと、ゆっくりと部屋に入ってきた
「赤ちゃんは柔らかくてすぐ怪我しちゃうから優しくね。頭を持って、お尻も支えてあげて。うん、上手」
先に泣き止んだ晴希を手渡すと、康平くんは四苦八苦しながらも優しく抱っこをしてくれた
それでも慣れない康平くんの抱っこに晴希がまた泣き出すと、康平くんが慌てて俺を仰ぎ見る
「ほ、ほーちゃん!」
「はは、康平くん上手だよ。赤ちゃんだからすぐ泣いちゃうだけ」
康平くんの後ろから晴希を支え一緒にあやしてやると、段々涙も止まりくりくりとした大きな瞳で康平くんの顔をじっと見つめていた
康平くんの後ろにいる俺の姿に気がつくと晴希はにっこりと花が咲いたように微笑んだ
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