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『修復』3

夕食後、会社からの電話に対応していた拓馬さんは電話が終わったようで子ども達の泣き声がこだまする部屋にそろりと入ってきた 泣いている康平くんと、康平くんを抱きしめる俺を一瞥するとぐずる晴希と晴翔を抱き上げあやし始めた 晴希と晴翔に対して目に入れても痛くない、というように溺愛し世話をする拓馬さん その愛を、少しでも康平くんに注ぐことはできなかったのだろうか 後の祭りではあるが、幼い体で寂しさに必死に耐えてきた康平くんの気持ちを考えると悔やんでも悔やみきれなかった 「…寝ちゃった」 泣き疲れたのか康平くんは俺の腕の中で眠りについた 眠ってからも強い力で俺の服を掴む康平くんに、また胸が切なくなる 「…悪い」 「それは俺に言う言葉じゃないよ」 「…そうだな、康平には我慢させ過ぎた」 そう言う拓馬さんは涙の跡が残る康平くんの頬を撫で、切なそうに顔を歪める その顔からは拓馬さんがひどく後悔していることが伝わってきた 「康平の母親が再婚して康平も引き取られたんだが、新しい父親との相性が悪いらしい。康平の面倒を見ていた祖母が体調を崩して引き取ることが出来なくて、俺のところに話が来た」 その後に続く言葉は分かっていた それでも、拓馬さんに確認しないといけない 「康平くんを引き取るのは構わない。引き取りたいとも思ってる。でも、拓馬さんは晴希と晴翔と同じくらい、ううん、離れていた分それ以上の愛を康平くんに注げる?」 「…」 「康平くんは愛に飢えてる。拓馬さんの晴希と晴翔への態度と康平くんへの態度が違ければすぐに気付いてまた傷ついてしまう。康平くんのことを心から愛せないのなら、康平くんのためにも引き取るのはやめよう」 俺の言葉を静かに聞いていた拓馬さんは真剣な顔で話し始めた 「…前までは康平のこと、いや子ども自体苦手だったんだ。俺たちの勝手に巻き込んだ自覚はあったから定期的に会いに行っていたけど、あの女の息子だからと思って康平が望んでいるものは察していたのに気付かないふりをしていた。…俺の息子でもあるのにな」 「…」 「でも穂積の腹の中で大きくなる晴希と晴翔に愛しさを感じるようになった頃から、少しずつ康平のことを考えるようになった」 「…」 「今までの康平への態度を後悔し始めたのは2人が産まれてからだ。2人が可愛くて仕方ないのは本当。けど俺が親バカ同然に2人に構うのは2人が伸ばしてくる手が、別れる時に伸ばされた康平の手と重なって見えたから」 「…うん」 「…俺は2人の影に康平を重ねて、会えない康平の分まで愛を捧げて懺悔していたんだろうな」 「うん」 「穂積、俺は康平のことを晴希と晴翔と同じくらい愛していることに気づいたんだ。向き合ってやらなかったことも、後悔してる。康平の傷ついた心がそう簡単に治るとは思わない。それでも、俺は康平のことも育ててやりたい」 穂積、そう呼ぶ拓馬さんは確かに父親の顔をしていた 「康平を俺たちの息子にしていいか」 「…うん。康平くんが頷いてくれたらね」 拓馬さんは頷くと俺の腕から康平くんを抱え上げ、拓馬さんに寝かしつけられ眠った晴希と晴翔の隣に優しく寝かせた 気持ちよさそうな顔で眠る康平くんの顔を見て、今後は康平くんが幸せに過ごせることを願った そして康平くんが望めば、俺達が幸せにするんだと意気込んだのだった

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