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『旅行』

「ライオン居るかな?虎も見たいな」 拓馬さんが運転する車の中は普段より饒舌な康平の声が絶えず聞こえていた 康平が泣いて眠った次の日の朝 腫れぼったい目を擦りながら起きてきた康平を椅子に座らせ、拓馬さんと俺は話をした 俺達が康平と家族になりたいと思っていること 康平と晴希と晴翔は半分血が繋がった兄弟であること もう我慢も寂しい思いもしなくていいということ 伝えたかったことを全て伝えると康平は赤くなった瞳からまたボロボロと涙を零し俺も家族になりたい、と言ってくれたのだった 無理に呼び方を変えなくていい、と話をしたが康平が俺のことをパパと照れたように呼んでくれたので俺も親しみをもって康平と呼ぶようになった 初めはどこまで甘えていいのか距離を測っていた康平だったが、晴希と晴翔よりも康平を優先する生活を送るうちに素直に甘えて素を出せるようになってきた この前なんてわがままを言って、俺に叱られたほどだ 康平は初めて俺に叱られ泣いていたが、しっかりと向き合って話をすることで納得して自分から謝ることができた 一緒に遊んで、話をして、ご飯を食べて、寝て、たまには衝突もして そんな日々を過ごしながら俺たちは本当の家族になっていくのだ そんな風に康平が俺達に慣れて来たので、拓馬さんと2人家族旅行を計画した 行き先は康平が行きたいと言ったサファリパークがある近場の県 一泊して帰る短期旅行ではあるが、旅行の話をした時から康平はとても喜び楽しみにしていた 「ライオンも虎も居るって。餌もあげられるみたいだから、あげてみる?」 「あげたい!あ、でも晴希と晴翔が怖いって泣くかも」 康平は本当に心の優しい子だ 正直、兄弟関係が上手くいくか少し心配していたが康平は初めから2人のことを進んで世話をしたり遊んだりと可愛がってくれている 康平が優しく関わってくれるおかげで晴希も晴翔もすぐに康平に懐き、笑顔を見せ遊んでもらおうと後を追うようになった 「2人が泣いても康平が抱っこしてあげたらすぐ泣き止むよ、2人とも康平のこと大好きだから」 「えー…」 俺の言葉に頬を赤らめ照れる康平に思わず笑みがこぼれ、康平の頭を撫でてやった

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