11 / 29

激しい情交 ※

「……だったら、いま助けて」 純は上体を起こして、仁志の肩に腕を回した。 そして、仁志の股に手を置くと、そこがすでに兆していることに気がついた。 仁志はベータながらに、フェロモンの影響を受けているのだろう。 「そんなこと言って、後でどうなっても知らないからな!」 煽られた仁志が、これでもかというほどに顔を近づけてきた。 「うん、いいから、はやくっ…あっ!ンンッ…ううっ」 仁志がベッドに上がって、純に覆い被さると、唇を塞いできた。 仁志の舌先が、上下の前歯の間に割って入ってきて、口内を犯してくる。 「ふっ……んん、あっ…」 顔が離されると、唾液で濡れたお互いの唇がてらてら光った。 その間にも、仁志は休む間もなく純の体をまさぐっていた。 すっかり発情しきった純の体は、些細な刺激でも快感を拾うようになっていて、少し触れられただけでも、異様なほどに昂った。 「あっ、そこっ、きもちいいッ……あッ、だめえっ、ああぁ!」 指先と舌先とで乳首を撫でられたり吸われたりした際には、強い快感が体中を駆け巡ってきて、純はそれで達してしまった。 「コレでイくんだ……」 仁志は驚いた顔をして、純が絶頂する様を見届けた。 それでも、純の体の昂りはまだ鎮まらない。 達したそばから、竿がピンと張り詰めてきて、腰の奥がじくじく疼いた。 「ひとし、たりない。これ…はやくう……」 純は仁志の股に手を置いて撫でさすり、必死に懇願してみせた。 「わ…わかった。わかったから、落ち着いてくれよ」 突然の懇願にあわてた仁志は、純の手をやんわり振り払うと、おそるおそる純のズボンのウエストに手をかけて、下にずり下ろした。 「あんッ…」 ズボンの衣擦れが刺激になって、下半身がより強く疼き、思わず声が漏れた。 「ジュンちゃん、すっごい濡れてる」 仁志の言うとおり、先ほど2回も射精したこともあって、純の下半身はしとどに濡れていた。 「んっ…ねえ、ひとし、はやくいれて?」 「う、うん」 仁志はジーンズのボタンをはずして、ファスナーを下げた。 フェロモンの影響か、すでに滾り勃った男根が、早く純の胎内で暴れたいと訴えかけてきていた。 「挿れるよ」 仁志は純の足首を持って開かせると、男根を胎内へゆっくり挿れていった。 「あ、すごいっ…」 肉襞を掻き分けられる感触が心地良くて、純はびくりと背中を逸らした。 「うん、あっ…すごい、いいッ……いいよお、もっと!もっとうごいてえ!!」 今度は最奥をグッ、グッと突かれて、電撃のような快感が全身をかけ巡った。 「あ、ジュンちゃんッ、ナカすごい……」 仁志が声を漏らした。 胎内で抜き差しを繰り返すうち、肉襞の締めつけが強くなっていって、とても気持ちがいい。 「あっ、ひとしっ、もうだめ…ムリ、もう、ぼくっ、でるうッ……」 「ジュンちゃんッ、オレも!」 仁志は、宙をさまよっている純の両手をしっかり握ると、より強く体を揺さぶった。 仁志も純も、快感が腰から脳の奥深くまで、幾度も駆け巡ってきて、すでに限界が近かった。 「ジュンちゃん、出すよ!」 「うんッ、だしてえ、いっぱいだしてえ!!」 仁志が胎内で精を吐き出すと、純も遅れて達した。 昂りが鎮まり、理性が帰ってくると、純はどうしたものかと考えた。 自分が発情期の苦しさから逃れたいために、たまたま家にやってきた仁志を利用してしまった。 ──どうしよう、どうしよう! 勢いだけであんなことを言って、せっかく仲良くなった同僚とうっかり関係を持ってしまった。 ちょうどいい距離感を保って、良い関係が築けていたと思ったのに。 「ひ、仁志……」 どんな言葉をかけたら良いのかわからなくて、純はエサを求める魚みたいに口をパクパク動かした。 「ジュンちゃん!ごめん!!」 純の心配とは裏腹に、仁志は何故か、その場で体を丸めて純に謝罪してきた。 ぐちゃぐちゃになった毛布が脇に置かれたベッドの上、生まれたままの姿で土下座する姿は、決してかっこいいものではなかったが、声色からして本人は真剣そのものなのが嫌でもわかった。 「え?」 「ごめん、ジュンちゃん。オレ、ジュンちゃんが発情期なのをいいことに好き勝手して、その……」 仁志がガバッと顔を上げた。 そして、純と同様、何を言うべきか迷っている様子だった。 「仁志は何も悪くないよ。誘って煽ったのは、ぼくだし」 純は仁志の肩に手を置いて、しっかり目線を合わせた。 「……オメガの人って発情期が来ると、自分の意思とは無関係にあんな風になるって聞いたけど…違うの?」 「いや、当たってるよ、当たってるけどさ……あの、仁志、謝る必要なんて無いんだよ。ぼく、ラクになったし」 純は仁志の肩から手を離した。 「ラクに?」 「うん、ぼくは症状キツいから立ってられなくてさ。だから、何も謝ることなんかないよ。むしろ、助かったくらいだし」 犯されたのに「助かった」なんて、どうかしている。 自分でもわかっていたが、ほかに言いようがない。 助かったのは事実なのだから。 「そう……あ、あの、オレさ、もし赤ちゃんできたら、ちゃんと責任取るからね!」 「何それ、プロポーズみたい」 仁志の突拍子もないセリフに、純はクスッと笑った。 「でも、もしできたら…」 「避妊薬飲むよ。まあ、何かあったら伝えるからさ」 不安そうに自分を気遣ってくれる仁志に、純はなんだか微笑ましくなった。 「そう?そういえば、発情期、今日が初日なの?オメガの人の発情期って、たしか1週間もあるんだよね?」 「うん」 「じゃあ、オレ、店長や店のみんなに伝えとくよ。ジュンちゃんはゆっくり休んでて」 仁志は純の服を探して拾い上げると、子どもにするみたいに下着を履かせて、両手でシャツの袖口やズボンのウエストを広げたりして、服を着せてくれた。 「うん、ありがとう。でも、連絡くらいは自分でするよ」 「そう?無理しないでね。あ、ジャガイモはキッチンに置いとくよ。悪いけど、オレ急ぎの用あるから、もう出るね。お大事に!」 仁志は時間を確認してから服を着込むと、バタバタとあわただしい様子で玄関まで歩いていき、純の部屋を出て行った。 仁志が出て行った後、純はキッチンに移動して、避妊薬を引っ張りだした。 そして、錠剤を口に放り込んで飲むと、またベッドに寝直した。 頭はすっきりしたけれど、激しく求め合ったせいか、体のあちこちが痛いし、ろくに動けやしない。 ──この場はやり過ごしたけど、これから、どんな顔すりゃいいんだろう… ふと我に返ってしまった純は、寝転がったまま顔を真っ赤に染めた。 純がこんな調子なので、仁志が置いて行ったジャガイモはビニールに入れられたまま、しばらくは床に置かれっぱなしだった。

ともだちにシェアしよう!