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第7話

 いずれは北大路家が代々受け継いできた屋敷に戻らなければならないであろうが、両親が存命であるうちは自由にしたい。結婚し伴侶を得た今ならば尚更に、一緒に暮らして嫁姑問題など絶対に嫌だと言ってマンション暮らしをしている泰都であるが、そこは名門 北大路家の子息。最上階とそのひとつ下の階を丸ごと所有しており、中で行き来できるように階段も取り付けられている。そんな広々とした部屋に泰都一人で生活しているはずもなく、彼の生活を支えるための使用人たちが基本的に下の階で各々仕事をし、最上階で主が寛げるように部屋を整えている。そんな彼らがやってきた桜宮の車を表で迎えた。  使用人の一人が車の扉を開き、彰人が降りるのを手伝う。地に足を付けた彰人を前に、使用人たちは一糸乱れぬ動きで礼をした。 「彰人様、此度のご婚礼お慶び申し上げます。本日泰都様は当主に付いて職務に出ておられますので、僭越ながら私――三井がお部屋へご案内いたします。お荷物の方はこちらでお運びいたしますので、ご安心くださいませ」  そう告げたのは一切を取り仕切っている者であろうか、黒く上等な布地を使って作られたであろうお仕着せを纏った優しげな男だった。

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