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第12話

 非難の色を強めてねめつけているというのに、泰都は気にした風もなくヒョイと肩を竦めた。 「遊んではないよ。一応これからここが彰人の家になるんだから、家の中でまでネコ被ってたら疲れるでしょ? 元々彰人はそんな大人しい性格じゃないし」  言いたい放題の泰都に彰人の眉間のシワがだんだん深くなっていく。そんなことが言えるほどに泰都は自分のことなど知らないだろうと胸の内で何度も何度も毒づいた時、クスリと控えめな笑いが泰都の後ろから聞こえて、二人の視線がそちらに向けられた。 「泰都様、そのような言い方では彰人様に伝わるものも伝わりませんよ。素直に〝家にいる間は何も気にせず寛いで〟と仰ればよろしいではないですか」  口元を手で隠しながら肩を震わせる三井の姿と言葉に、彰人は二重の意味で驚きを見せる。まさかあの嫌味のような言葉にそんな優しい気遣いが含まれていたなどと露ほども思わず、そして三井がそれを笑いながら主人に指摘できるほどであるとは思わなかった。どうやら三井はそれが許されるほどには泰都と長い時間を共にし、信頼関係を築いているらしい。パーティーなどで泰都に会う時は、彼はいつも一人で三井の姿を見たことは無かったが、もしかしたら北大路の本邸で長く勤めていたのかもしれない。

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