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第14話
「……彰人とは仲が良いと思ってたんだけど、え、これもしかして俺の独りよがり? そんな事実知りたくなかったよ」
他者にはあまり知られていないが、これでも付き合いだけは長いのだ。愛されているかと問われれば即座に頷くことはできないが、それでも友であるということだけは迷うことなく言い切れる仲だと思っていた泰都はあからさまにガックリと項垂れる。それでも腰に回した腕は離さないのだから流石としか言いようがないが、いつも飄々としている彼が目に見えて落ち込んだ様子に、口は悪くとも生真面目な彰人は腕が離れていないことにも気づかずワタワタと慌てだした。
「い、いやッ、嫌いとか、そういうわけじゃなくてッ」
「え!? 嫌いか嫌いじゃないかなの!? まずそこからなの!? 結婚もしてるのに!?」
勢いよく顔を上げて彰人を見た泰都に目を見開く。
「傷口をえぐりましたね」
三井の冷静な指摘に彰人はハッと勢いよく己の口元を手で覆った。
「いやいやいや! そうじゃなくて! そうじゃなくて、その……」
「その?」
適当な言い逃れは許さないとばかりに泰都がわざと屈んで顔を覗き込んでくる。その視線から逃れるように、彰人はツイと顔を背けた。
「その……、あなたと話すのはパーティーの時だけだったし、友達と言わせてもらえるなら嬉しいけど、でも、その、愛してるとか、番として仲が良いわけじゃない。だから、仲が良いフリをしなくて良いっていう仲は、そういう意味で……」
嫌いと言いたかったわけじゃないのだと、彰人は恥ずかしさで何度も言葉を途切れさせながら伝えた。彰人とて泰都の事が嫌いなわけではなく、個人的には友だと思っている。恋人たちがするような触れ合いは苦手だが、無闇矢鱈と傷つけたいわけじゃない。とはいえ、恋愛などしたことのない彰人にとっては、口に出すには恥ずかしすぎる発言だ。どうしても頬は真っ赤に染まり、変な汗まで噴き出ている。そんな彰人の様子に、先程まで後ろに闇が見えるのではないかと錯覚するほどに落ち込んでいた泰都がパッとにこやかな笑みを浮かべた。場の空気が華やぐようないつもの笑顔に、彰人は彼の気分がいつも通りに戻ったと胸をなでおろす。
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