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第15話

「なんだ、そっちの〝仲〟ね。なら問題はない。俺たちはもう結婚したんだし、これからそういう意味で〝仲良く〟なっていけば良いんだよ」  パーティー会場でよく見かけたキザな笑みを浮かべて、泰都は両腕を腰に回すと体重など感じないというかのように軽々と彰人の身体を抱き上げた。 「おいッ!」  急に抱き上げられた彰人は顔を真っ赤にして足をばたつかせ、全力で泰都の肩を押すが彼はビクともしない。 「まぁまぁ、〝仲良く〟なる為にもこれくらいは普通だと感じるくらいには慣れようね」 「離せ! 自分で歩けるッ。こんなの普通じゃないだろッ」  どれだけ仲睦まじい夫婦でも、周りの目を気にしない番たちでも、怪我をしたわけでも何でもないのに抱き上げるなどということは無い。現に彰人の両親はそれはもうお互いを愛し抜いていたし惚気も散々聞かされてきたが、父が母を何でもない時に抱き上げている姿など見たことが無い。つまり今の状態は普通などではなく、完全に異常だ。だというのに泰都は暴れる彰人の身体を放すこともなく、まるで愚図っている赤子をあやすかのように困った顔をしながらスタスタと歩いていく。これではまるで彰人が聞き分けのない子供のようではないか。 「こんの馬鹿力ッ! 鬼畜ッ! 遊び人ッ!」  落ちて怪我をしても構わないとばかりに全力で暴れているにも関わらずビクともしない泰都にだんだんと腹が立って彰人は容赦なく罵倒するが、それを聞く度に何故か泰都は嬉しそうにニコニコと笑みを浮かべる。 「はいはい、俺は彰人の口の悪さには慣れてるから何を言われても大丈夫だよ。それに遊び人だなんて、嫉妬してるの?」  彰人にも可愛いところがあったんだね、などと言いながら泰都は三井が引いた椅子に彰人を座らせ、己もまたテーブルを挟んで彰人の正面に座った。三井の合図で次々と料理が運ばれてくる。

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