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第17話

「んー、まぁ、俺みたいになる必要はないけどね。女の子と仲良くしている彰人なんて見たくないし」 「あなたを見かける時はいつも誰かを口説いていたように記憶しているが」  それも毎度毎度別の人を。冷めきった目で見つめる彰人に、違う違うと泰都は手を軽く振った。 「あれは口説いてるんじゃなくて、ただの挨拶。それに、女性やオメガの男性に優しくするのは紳士の嗜みだよ」  美しい、可愛い、よく似合うといったような美辞麗句ならば円滑に交友関係を広げるためにも有効な手であろうが、ただの挨拶で口づけなどするだろうか? 額や頬や手だけで唇にはしたことが無いと言われたとしても、彰人にとってそれは理解の範疇を超えている。 「どうやら住む世界が違いすぎるようだ。別に止めろとは言わないが、いつか誰かに刺されないかだけは注意した方が良い。あと僕はオメガだけど、さっきみたいに抱き上げたりキスしたりはいらないから」  それをされないからと言って、優しくされていないだの仲間外れだのと喚きたてる性格でもない。むしろああいった接触に慣れていない彰人からすれば心臓を守る為にも無い方が良いのだ。大真面目にそんなことを言う彰人に、泰都は大きく目を見開いた。 「いや、そこは普通止めてって言うでしょ。というか、彰人にこそ抱っこやキスは必須だよね」 「あなたは誰かを口説いていないと息ができないだろう? 流石に息をするなだなんて言えない。でも僕は口説かれなくても息ができる。むしろ口説かれない方が息はしやすいから、僕にそういったものは不要だ」  至極大真面目にそんなことを言う彰人に、泰都は久しぶりに頭の中が真っ白に染まった。こんな感覚は何年ぶりだろう。

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