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第18話

「口説いてないと息ができないって……、彰人の中の俺はマグロなの?」  泳ぎ続けなければ息ができなくなるマグロと同じくらい、泰都は誰かをひっきりなしに口説いているのだと彰人は思っているのだろうか?  そんなふざけているような会話を端の方で聞いている三井から言わせてみれば、彰人に誰かを口説いていなければ息ができないと言われるのは日ごろの行い――つまりは自業自得以外の何物でもないのだが、当の泰都はそんなことはすっかり棚に上げてやれやれと言わんばかりに首を横に振った。 「結婚もして、せっかくの新婚ホヤホヤなのに口説きマグロと思われているなんて心外だ。これは是非とも認識を改めてもらわないと駄目だね。早急に問題を解決するためにも、今度の休みの日に、一緒に出掛けようか?」  そんなに必死になるほど〝口説いていないと息ができない〟というのは許しがたいことだったのだろうか? だとしたら申し訳ないことを言ってしまったかもしれないと彰人はほんの少し視線を彷徨わせたが、泰都の声音はどちらかと言えば大げさに傷ついたフリをして冗談を言っているようないつもの軽さがある。そう、場をつなぐ為にわざと大げさに笑ったり、どうでも良いことに怒ってみたりして面白おかしくしようとしているような感じに似ていた。 (やっぱり――)  彼はよくわからない。

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