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第19話

「買い物はかまわないけれど、あなたこそそれで良いのか? いつも忙しくしているというのに、休みの日くらい羽を伸ばした方が疲れが取れるだろう?」  好きで向いている仕事であったとしても、ずっと動きっぱなしというのは存外疲れるものだ。それは何事にも優れたアルファであっても例外ではないだろう。休みの日くらいたっぷり睡眠をとってゴロゴロしたり、それこそ好きなように買い物に出かけたりした方が疲れは取れ、またやってくる仕事にも打ち込めるというものだ。  行きたくないというわけではなく、純粋に泰都を心配しての言葉はちゃんと彼に伝わっているようであったが、しかし泰都はニコニコと楽しそうに笑みを浮かべながらゆっくりと首を横に振った。 「いや、気分転換するならなおさら一緒に買い物に行った方が良いよ。彰人だって足りないものとか、欲しいものとかあるでしょう? 彰人の大好きなフワフワのぬいぐるみを買ってあげるから、一緒に行こうよ。まぁ、既にいっぱい持ってきてるみたいだけど」  扉を開けた時にチラと見えたのだろうぬいぐるみの山を指しての言葉に、彰人はフイと顔を横に逸らせた。どこか言いづらそうにモゴモゴと唇を動かしている。 「……持ってきて良いと言ったのは、あなただ」  家主である泰都の許可を取らずに持ってきたわけではないと、どこか言い訳のように言う彰人は、まるで点数の悪いテストを親に見られた子供のようだ。そんな常とは違う顔をする彰人をこれ以上虐める趣味はないので、泰都は素直にひとつ頷いた。 「もちろん、好きなだけ持ってきて良いと言ったし、責めてるわけでもないよ。ぬいぐるみの山に彰人が埋もれて窒息死してしまうのは駄目だけど、その危険が無い間は何も言わない。俺は彰人に何かを捨てさせたいわけじゃないからね」  泰都は彰人のある種の物欲を知っているが、その理由は知らない。仮にも結婚して、発情期が来たら番う予定の相手に理由をひた隠しにしていることに彰人は罪悪感を覚えるが、どうしてもその理由を明かす勇気が持てなかった。  何かが奪われたわけではない。泰都がこの先永遠に事実を知らなかったとしても、この結婚にも番関係にも影響を及ぼすことなど無いだろう。ただその〝事実〟を彰人が忘れられないだけで。捕らわれ続けているという、それだけで。

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