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第12話 元勇者が魔王に負ける訳にはいかないんです

 魔物の動向に関してはエイリに聞けばいいとして、後は対策だな。  父さんたち騎士団がどう話してるのか聞けるかな。それとも子供には教えてくれないのかな。いや、年齢的には子供じゃないんだけどさ。 「そんなことより、兄さん」 「なに?」 「部屋で僕と二人きりとか、わかってる?」 「え?」  そうだった。魔物のことが気になって忘れてたけど、俺、コイツに襲われたばかりじゃん。  何してんの、俺。貞操の危機じゃん。  何を呑気にベッドに腰下ろしてるんだ俺は。 「本当に兄さんは抜けてるね。まぁ、そういうところも好きなんだけど……」  あっという間に後ろに押し倒され、俺は心の中で激しく後悔した。  母さんに聞かれたくなくて部屋に連れてきちゃったけど、直ぐに逃げれるようにドアの前にいれば良かった。 「さっきの続き、しようか?」 「ま、待て待て待て。母さんがいるんだぞ。いや、そういう問題でもないんだって。俺たち兄弟だから、駄目だって。な、エイリ。俺はお前の兄貴として生きていくって決めたんだ。だから、俺はお前を好きにならない」 「ふぅん? 弟の僕が嫌いなの?」 「いや、好きだけど。意味が違うだろ。それは家族としてだ。お前の好きと違うじゃん。それにお前は元々幼馴染だし、友達以上にはならないんだよ」 「でも、好きなことに変わりないよね? 好きの意味なんてどうでもいいよ。好きって気持ちさえあればそれでいい」  駄目だ。コイツに何言っても無駄だ。  なんだ、嫌いだって言えばいいのか。でも今の俺にとっては血の繋がった弟だ。嘘でも嫌いだとは言えない。  コイツ、それを分かってて言ってんのか。ズルくないか。 「あ、あのな、お前はそうでも俺は違うんだよ!」 「そうなんだ。でも、僕のこと嫌いじゃないんだよね。好きなんだよね?」 「だ、だからさ!」 「今だって拘束《バインド》してないのに抵抗しない。僕が傷つかないようにって考えてくれてる」  本当にコイツの言う通り、俺はこんな目に遭ってまで何に気を使ってるんだよ。大声出すとか無理やり押し退けるとか出来るだろうに、弟が世界で一番可愛いってアルト時代の俺が頭の中で言ってくるんだよ。だから抵抗できないんだよ。  なんで俺はこんなにもブラコンになってしまったんだ。コイツの中身が幼馴染だって分かってんのに。 「兄さん、本当に優しいね……そういうところが好き。昔からそう。君は、ずっと優しい」 「っ、お前、な……」  エイリが俺の耳を舐めてきた。  何これ、背中がゾワゾワした。くすぐったいのに、力が抜ける感覚がして変な気分。  耳朶を甘噛みされたり、耳の中を舐められたり、メチャクチャ耳責めされてる。俺、そんな趣味ないと思ってたのに、ちょっと気持ちいいとか思ってる自分がいる。 「っ、く……」 「耳で感じてるの? 兄さん、もう勃ってるよ?」 「う、るせ……」  男の子ってこういう時イヤよね。興奮してるの隠せないんだもの。  でも駄目だぞ、俺。俺はお兄ちゃんだぞ。いくら弟が可愛くても手を出してはいけません。抑えろ、俺の心の中のアルト。  コイツは弟だけど幼馴染。親友。そして魔王です。 「兄さん……大好き……」  流されるな俺。たとえ力をなくしても俺は勇者だ。勇者だった男だ。  魔王に負けるな。

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