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第18話 お腹に穴が開きました
なんだ、これ。腹が熱い。
俺は立っていることが出来なくて、膝から崩れ落ちるように倒れた。
「兄さん!」
地面にぶつかる前にエイリが俺のことを抱き留めてくれた。
ヤバい。色々と、ヤバい。
「天族ごときが、兄さんを殺そうだなんて、許さない……ゆるさない……ユルサナイ」
エイリがまたファニアルに手を翳し、攻撃を放った。
ファニエルもそれを避けたが、続けて撃たれた攻撃が足に当たり、黒い炎に焼かれて肌が溶けている。正直、えぐい。
「っぐ、ああ、あ!」
「コロス……コロス、コロスコロスコロス……」
マズい。本気で殺すつもりだ。
ここで天族を殺したら、天と地で戦争になるぞ。それにお前だって正体がバレてここにいられなくなる。父さんと母さんを悲しませるようなことを、お前だって望んじゃいないはずだ。
「エイリ……駄目だ」
「兄さん! なんで天族の味方をするんだ! アイツは兄さんを殺そうとしているんだよ!?」
「そうじゃ、ない……お前が、魔王だってバレたら、ここにいられない、だろ……」
「……で、でも」
「いいから。俺の言うこと、聞いてくれよ……」
エイリの殺意が消えた。
助かった。最悪の事態にはならずに済んだな。
「ファニエル、お前もどっか行け。じゃないと、次は本気で殺されるぞ」
「な、なにを……」
「いいから、退け!」
「っ……まぁいいでしょう。どうせ貴方は放っておいても死ぬでしょうし。次は魔王、貴方を殺します」
捨て台詞を吐いてファニエルは空に帰っていった。
確かにこのままじゃヤバいな。俺の中にまだ神の加護があるとはいえ、出血が多すぎる。回復が間に合わない。
「……兄さん。大丈夫だよ、僕がすぐに治すから」
「エイ、リ……」
エイリが俺の腹に手を当てて、治療魔法をかけてくれた。さすがに時間かかるだろうし、傷が治っても失った血液は戻せないから、暫くは動けそうにないな。
「どうして……」
「あ?」
「どうして、あの天族を庇ったの」
「庇ったつもりは、ない。ここでお前が、アイツを殺したら……戦争になりかねない、だろ……俺は、お前が居場所を失うのが、嫌だっただけだよ……」
「僕の、居場所?」
「お前、父さんも母さんも好きだろ……魔王だってバレたら、一緒にはいられない……そうなっらた、お前はどこに行くんだ」
「どこ、かな……分かんないよ」
「だったら……兄貴の言うこと、大人しく聞いて……バレないようにしろ。父さんや母さんなら、ちゃんと説明すれば分かってくれそうだけど……さっきの変態天使みたいに、話の通じない奴だっているんだし……」
ヤバい。段々と意識が遠のいていく。さすがに血ぃ流しすぎたな。
でも、勇者召喚が出来なかったら俺が死んでないってバレちゃうだろうし、また天族が俺を殺しに来るだろう。なにか、対策を考えないとな。
ああ、もう起きてられない。
「…………優しいね、白瀬。だから好きなんだよ」
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