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第21話 親友だった頃の話。

 それから俺達は神の加護を得て、様々なダンジョンを攻略していった。  さすがに剣を手に入れたからって一気に魔王を倒せるわけじゃない。まずは経験値。実際の数字に出るわけじゃないけど、戦闘の経験は積んでおかないとまともに戦えない。  それに高藤は魔術師というジョブを選んだ。色んな魔法を覚えないといけないし、それには店に出回ってる魔術書以外にも遺跡とかに封印されている貴重な術書も手に入れないと強力な魔法は得られない。だからこそ、ダンジョン巡りは必要不可欠というわけだ。 「それにしてもさ、勇者って俺で良かったのか?」 「僕は剣を振ったりするのは性に合わないし。後ろで魔法唱えてる方がいいよ」 「まぁ俺も魔法とか頭使うのは向かないから良いんだけどね。それに、俺もお前が後ろでサポートしてくれてた方が安心するし」 「だからって、白瀬は力任せに魔物に突っ込みすぎ。もっと考えて行動しようよ。いくら神の加護を受けているからって無茶だよ。致命傷を受けたら死ぬんだから」 「大丈夫だって! 俺が調子に乗ったら高藤が止めてくれるだろ」 「……全く。もう調子に乗ってるよ」  高藤は小さく笑い、肩を竦めた。  こういうやり取りは元の世界にいた頃と変わらないな。だからこそ、異世界で魔王を倒せって言われても普段通りでいられる。  異世界に呼ばれたのが親友と一緒で良かった。これが全く知らない他人だったら連携を取るのも大変だったよ。 「それにしても、なんでこの世界の人に魔王が倒せないのかな」 「さぁ。でも、それはどうでもいい事だよ。もう僕達はここに呼ばれてしまった訳だし、倒さないと戻れないんでしょ? だったら、やることは一つだよ」 「お前はいつでも冷静だな。そういうのがモテるコツなのかな」 「モテたいと思ったことはないけど」 「ケッ! モテるやつは余裕だな! 俺なんて彼女が出来ても長続きしないし、この間も峯岸さんに告白したけどフラれちゃったしさぁ」 「……残念だったね。白瀬、良い奴なのに」 「良い人止まりってこと? もう誰とも進展ないじゃん、それ」  いっそ、この世界の女の子を狙ってみるか。  なんて、無理だな。魔王を倒したら俺たちは帰還するんだ。この世界の女の子に手を出したところで別れが決まってるんだ。無駄なことしても意味ない。 「元の世界に戻ってさ、俺異世界を救ったんだぜーとか言ったらウケるかな?」 「頭おかしいヤツだと思われて皆からドン引きされると思うよ」 「やっぱりかぁ……こんな貴重な経験してるのに自慢できないなんてつまんねーの」 「いっそ、魔王を倒すのやめてこの世界で暮らす?」 「ここで? やだよ、漫画もゲームもないのに」 「ふふっ。君らしいね。まだ雑誌買う前だったもんね」 「そうだよ! 先週、メッチャ良いところで終わってたんだよ! この世界に来てどれくらい経った?」 「覚えてる限りだと……ひと月、くらいかな」 「そろそろ最新巻も出るなぁ。バイトも無断欠勤だし、親も心配してるよな」 「……君のところは、そうだろうね」  高藤が遠い目をして、そう呟いた。  まるで自分が消えても悲しむ人はいないと言うように。きっと自分の親のことを言ってるんだろうな。正直、俺だって高藤の親のことは良い印象がない。  もしかしたら高藤は、こっちの世界に残りたいのかな。 「……お前のことを心配してる人はいるよ」 「え?」 「俺の親は、息子の俺以上にお前を可愛がってるって、知ってるだろ?」 「……無事に帰れたら、ちゃんと親孝行しなよ?」 「気が向いたらな」  無事に元の世界に帰って、コイツを待ってる人がいることを分からせてやらないとな。  じゃないと、高藤はいつまでも一人のままだ。そんなのは、悲しすぎる。  今は、今だけは。俺がそばにいてやらないと。

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