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第4話
先日、部屋で有季と会ってから数日が過ぎた。
別れる前に「落ち着かなくてごめん、今度はホテルにでも行こう」と俺は有季に言ったけれど、それはつまり今度こそはちゃんとセックスしたい、という意味である。
要するに、穴だ。
有季の恋の穴のことを俺はずっと考えている。
しかし俺の言った言葉は半分、嘘になる。なぜなら、ホテルでは男同士は敬遠されるからである。
その理由は深い性差別ではない。単純に、ホテル側は布団が汚れるのを危惧しているのである。男同士のセックスは男女のものより汚れる可能性が高いのだ。
男同士の盛り場として有名な街のホテルならまだしも、ここら辺は住宅地であるし、ホテルをえり好み出来ない。そのために遠出するのもためらわれる。
男同士のセックスで無理をすれば、有季の身体にも負担がかかる。その後にホテルから出て歩かせるのは酷だなあと、俺は考える。
それを考えると、最初はやはり家でした方がいいと思う。あと、家でのほうが時間を気にせずゆっくりできるし――。
仕事、子ども、家事、それを除けば俺の頭の中はもう有季でいっぱいだ。仕事からの帰り道でも、家で皿洗いをしていても、有季の可愛らしい表情や身体が頭を回る。
ああ、早く会いたいものだ。そして彼を抱き締めたい。いや彼をこの腕で抱き――
「パーパ?」
「お、おう有玄」
息子は、股の間から訝し気に俺を覗き込んでいる。子どもと一緒にテレビの子供番組を見ながらつい有季のことを思い出してしまったが……。
「僕この歌すき」
「そ、そうか……」
気付けば、有玄の話をちゃんと聞いてあげていなかった気もする。こんな不埒な父ですまん。
有玄の話もしっかり聞いてやらなければな。
そんなことを考えていると、姉から電話があった。
『あんた、今度の日曜どうすんのよー。良かったら、有玄見といてあげるけど?』
まさにチャンスの神が降って来た。
姉よ、冷たいなどと思ってしまいすまん。姉ちゃんは最高の姉貴である。
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