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第6話 夏向

オレはいままでのどのときにも、 ももちゃんのあとを追いかけているような人生だった。 ももちゃんがサッカーをやればサッカーをやり、 英語の塾に通いだせば同じく塾に通いだし、 そうしてモデルをやるといいだせば 自分もやっぱりモデルをやると言い出した。 いつだって真似ばっかしてた。 真似をしていればそばに居られるから。 そうしてどんどん先に進んでいってしまうももちゃんに、 当然オレはいつまでも追いつけない。 自分のやることを自分で決めていくももちゃんと。 それをただ、真似ばかりしてきた自分。 正直、モデルをそのまま続けてくれれば一緒にその道に進もうと思ってた。 そしたら卒業したって一緒にいられるから。 そしてそれが叶わなくなってしまったいま、 オレはこの先、どうすればいいかがわからない。 ほとんどの生徒がもう就活は終わっているというのに、 オレはいまだなにも動き出せずにいる。 ももちゃんの真似で始めたモデルのバイトをずるずるとやってはいるものの、 いったい、これからどうしたらいいのだろう。 1年先にある卒業は待ってはくれないとわかっていても、 オレには先に見えるものが何もないのだ。 ふいっと顔を上げればガラス窓の向こう側が真っ暗になっている。 明るい店内にはいま5人のお客さんがいて、 そして、そのどのお客さんも女の人だった。 店内の女性みながそれぞれ、 色とりどりの花を抱えてももちゃんを見ている ・・・なんて気がしてくる。 笑顔で接客するももちゃんを少しの間見つめてそこから目線を外すと、 ももちゃんが淹れてくれたハーブティが自然と目に入った。 今日、ももちゃんが淹れてくれたハーブティは、 可愛いもも色をしていた。 一応、ノートを広げてペンをくるくるする。 しばらくすると店内がざわついて、反射的に顔をあげた。 「たけちゃん」 「よぉ」 明るい店内に、柔らかさと華やかさの両方の空気が混ざる。 そこには椿さんが来ていた。 課題から逃避する理由を見つけたオレは思わず立ち上がって 「椿さんっ!」 声をかけた。 「あ、夏向(かなた)ちゃんも来てたんだ」 ぶんぶんと手を振れば、 椿さんはいつものようにふわっと笑って小さく手を振り返してくれる。 するとお店にいたお客さんがまた、軽い悲鳴を上げた。 そんな周りの空気をまったく気にしないで、 椿さんはももちゃんのそばによる。 「店に来るなんて珍しいな」 「今日、撮影近くであってさ」 「そっか」 二人が並んでいるその絵面はオレから見てもあまりにもキレイで、 視線は思わずそこに集中してしまう。 椿さんは3歳のころからモデルをしている有名人だ。 オレは自分がバイトを始める前に ももちゃんから椿さんを直接紹介されている。 大学1年の春、 雑誌の表紙でしか見たことがなかったそのヒトが目の前に現れて、 オレはとても緊張した。

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