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第5話

それから俺と夕焼けくんは何事もなく、秋葉原を堪能して最終日の夜になった。 夕飯のラーメンを食べているときに、夕焼けくんのスマホが鳴った。 「夕焼けくん、スマホにラインが来てるんじゃない」 「SNSのDMですね。返信してもいいですか」 「いいよ、遠慮せずどうぞ」 夕焼けくんは僕に見えないように角度を変えて返信をしていた。 そのスマホの画面が後ろのガラスに反射して見えた。 見たらいけないと思いつつも、俺はそのガラス越しに画面を見た。 『好きな人と進展あった?』 『数日間一緒に過ごしたけど何にも無い。僕は相手にはならないみたい』 『まぁ、フラレてドール仲間としても一緒に居られないよりマシかな』 『そうだね。良いビジネスモホテル教えてもらったのにごめん』 そんな内容のやり取りだった。 「すみません、もう終わりました」 「そ、そう……」 「ラーメン伸びちゃいますから早く食べましょう」 やっぱり夕焼けくんは俺とそういうつもりだったみたいだった。 夕焼けくんは何でもないみたいにラーメンを啜っていた。 そしてその日の夜も、俺と夕焼けくんの間に何もなかった。

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