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Just the beginning ⑤
3人が出会ったのは警察所勤めのときだった。
章良は、東京都の警察官採用試験を優秀な成績で合格し、訓練や研修などを経て最終的に警備部門へと配属された後、希望を出して機動隊の隊員となった。
章良の場合、その人並み外れた身体能力が評価されたことにより、『特別訓練員』として認められ、難なく機動隊員になれたのだが、涼と尚人に出会ったのもそこで勤務していた頃だった。
涼は章良が機動隊に配属されて約2年後に、尚人は更に1年経ってから配属されてきた。章良と同様に『特殊』な能力を持ち合わせていた2人も、『特別訓練員』という枠組みだったらしい。
その頃から、章良くん、と自分を兄の様に慕ってくれた2人とは、自然に一緒に行動するようになっていた。口が悪くて気の強い涼と、いつも落ち着いていてあまり感情を出さない尚人。そして真面目だけが取り柄の自分。全く性格が違うのに、なぜだかウマが合ったから不思議だ。
機動隊として勤務していた中で、日本社会、警察社会の汚い部分を、章良は嫌と言うほど目にしてきた。金と権力が全て。守られる対象は、お偉い政治家だけ。その家族はどれだけ危険にさらされても、警護対象ではない、という理由から助けることもできない。警護とは別の部署にいたにも関わらず、毎日耳にする、警察庁の横暴な言動。しわ寄せが来るのはもちろん、都道府県警察だ。
自分はこんな汚い、自分のことしか考えていない奴らのために、武術を使いたかったわけではない。
本当に、助けを必要としている人間は他にいる。
そう自分の中で鬱屈した感情が高まっていたとき、国際的に活躍する民営の警護団体があることを知った。日本では民間ボディーガードはまだまだ立場が弱い。法的には何の権威も持たず、所持できる武器も限られている。しかし、その団体ならば海外では銃での護衛も可能だし、訓練も受けることができる。
それに、例え日本での警護であっても、警護対象ではないから、という理由で助けられないよりずっとマシだ。逆に言えば、こちらにも警護対象を選ぶ権利がある。まあ、もちろん食べていかなくてはならないので、えり好みばかりはしてられないが、少なくとも本当に助けが必要な人たちを自分たちで判断し、守ることができる。
章良は迷わずその道を取った。27歳での決断だった。
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