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小話(ハロウィン編) クッキー・センセーション ④
「ただいまぁ」
尚人の声が玄関から聞こえてきた。晃良が時刻を確認すると、夕方の5時だった。リビングに入ってきた尚人が、通夜のような顔をした晃良を見て尋ねてきた。
「あれ? どうしたの? なんか、暗いね」
暗くて話す気にもなれない晃良に代わり、涼が今までのいきさつを尚人に説明してくれた。説明が終わった途端、尚人があははと笑い出した。
「また来んの? あの2人」
「笑い事じゃない、尚人。あいつらが来ると、俺の神経がすり減って、疲労困憊 になるのが嫌なんだよ」
せっかくの休みなのに。と晃良はブツブツ言いながら、持っていた携帯をリビングテーブルに置いた。
「えー、でもある意味楽しくない? あの2人が来ると」
「はあ?? 何言ってんだよ、尚人!!」
「あ、でも俺も分かるわ。なんか起きるんじゃね? って期待するよな」
「涼まで何言ってんの??」
この2人、もはや自分と黒埼の関係の行方を楽しんでいる節があるのは気のせいだろうか。
「これってさぁ、あれみたいだね。なんだっけ、あの、都市伝説の」
「都市伝説?」
「あれだって。電話してきて、段々近づいてくるやつ」
「ああ、分かった。あの、メリーさんのやつ?」
「それそれ! 涼ちゃん、よく名前出てきたね」
「なあ……それ、なに?」
「晃良くん、知らないの? そういう話があるんだって。怖い話で」
尚人の説明によると、都市伝説の1つに『メリーさんの電話』というものがあるらしい。女の子が捨てた『メリー』という人形が、女の子にある日電話をしてきて電話する度に女の子に近づいてくる、という怖い話だった。晃良は恐怖系が全くダメなので、その話を聞いただけでも、あまり良い気分にはならなかった。
「それと黒埼のが似てるってどういうこと?」
「だって。段々近づいてきてるじゃん。メールする度に」
「最後のが車内だったからもう来んじゃね?」
「来るよ~晃良くん」
「ちょ……やめろって……」
晃良が抗議しようと声を上げたその瞬間。
ピンポーン、と間の抜けたインターホンの音が響いた。
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