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Going out with you ⑨
「なあ」
「ん?」
「どっかでお茶しね?」
「いいよ。ここ、茶屋あるよ」
そこで、茶屋のある池畔の近くまで歩いたのだが。
「うわ、混んでんな」
その小さな茶屋は人気があるようで、かなりの客で溢 れていた。これではのんびりと風情を楽しんで休憩などできないだろう。
「どうする? アキちゃん。待つ?」
「ん……。それでもいいけど……」
「どうしたの?」
晃良は、先ほどから自分が思っていたことを正直に口にすることにした。
「もうちょっと、人気のないところでお前と話したいんだけど」
「…………」
まあ、そういう顔になるわな。
黒埼は顔いっぱいに驚喜の表情を見せて、晃良を見つめた。
「……人気のないところ?」
「うん……いや、別になんかしたいわけじゃないからな。お前のこともっと知りたいっていうか……。静かなところで色々話したいなと思って」
「行こ。人気のないとこ。丁度昼だし、ランチしよ」
人気のないとこ、を強調しつつ黒埼がずんずんと庭園の出口へと向かっていく。おそらく、「別になんかしたいわけじゃないから」という晃良の台詞は、黒埼の都合のよい耳にすっ飛ばされているだろう。
まあでも、人気のないところでゆっくり話したいのは事実だし。ホテルに連れて行こうとしないだけマシかもしれない。晃良はやれやれと、張り切って前をいく黒埼の背中を追いかけた。
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