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Just the way it is ③
もしかしたら、黒埼は本当のところかなり傷ついて、もう晃良とは絡みたくなくなったのではないか。じゃなかったら、あんなにウザいくらいに押していたのに、こんなに急に晃良の前から存在を消すだろうか。
前の自分だったら、黒埼が消えてくれてせいせいしていたかもしれない。けれど、今の自分はどうしてもそうは思えなかった。自分の我が儘で心の準備もできてないのに過去をほじくり返して、結果それを抱えきれずに引いてしまったのだから。
「晃良くん、話したくなかったら無理には聞かないけど、抱えきれなくなったら1人で悩まないで言ってよ」
「うん……ありがとな」
「なんか、こんな晃良くん初めてだから。仕事にも集中できてないみたいだし」
「……ごめん」
「大丈夫だけど。フォローできるところはするし。でも、仕事中は気をつけてね。何があるか分かんないから」
「そうだな……。ごめん」
「謝らなくていいって。そういうのはお互い様だし」
そう言って、尚人が優しく笑った。尚人は自分よりずっと年下なのに。いざという時しっかりしていて本当に頼りになる。涼は元々しっかりしているのでいつでも頼りになるが。そう思うと、晃良はなんやかんやで結構この年下2人組に助けられているなと感じる。
とりあえず、黒埼のことは一旦頭から閉め出そう。
そう思い、目を瞑って大きく深呼吸した。ゆっくりと目を開けた時には、晃良の頭は仕事モードに完全に切り替わっていた。
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