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Just the way it is ⑮
施設の部屋は2人一部屋で共用していたが、自分の部屋はここ1年ぐらい誰も入ってこなかった。1人で寝るのが心細くて。いつの間にかヒョウちゃんが時々忍び込んで一緒に寝てくれるようになった。
そうしている内に、自然とこんな夜が度々訪れるようになったのだ。
衣服を整えて、再び2人でベッドに潜り込む。ヒョウちゃんがいつもするように後ろからぎゅっと抱き締めてくれた。その温もりと匂いに自然と笑顔になった。ヒョウちゃんは自分に沢山の物をくれる。温かさ。優しさ。嬉しさ。切なさ。安心感。そして、ヒョウちゃんを大事に思う気持ち。
『ヒョウちゃん』
『何?』
『好き』
『…………』
ヒョウちゃんは返事の代わりに抱き締める腕に力を込めて、首筋に顔を埋めてきた。
『俺、早く大人になりたい。そんでいつかヒョウちゃんと、ちゃんとヤりたい』
『……そんな焦らんでも、俺は今のままでもいいよ』
『俺も今、凄く嬉しいし、楽しいよ。だけど、ヒョウちゃんともっともっと近付きたい。1つになりたい』
くるりと腕の中で体を方向転換して、ヒョウちゃんと正面から向き合った。大人びたヒョウちゃんの瞳と真正面からぶつかる。
『だから。待ってて。俺、早く大人になるから』
『……うん』
『ヒョウちゃん以外の人は要らない。ずっとヒョウちゃんが1番でずっとヒョウちゃんと一緒だから』
『……ずっと?』
『うん』
『……そしたら、アキの最初は俺にくれる?』
『当たり前じゃん。俺、ヒョウちゃんとしかしないもん』
『ほんとに?』
『ほんとに。約束する』
『約束?』
『うん、約束』
2人でふふっと笑い合う。誓いの意味も込めて自分からヒョウちゃんにキスをした。
『アキ。そろそろ寝よう。もう遅いし。先生に見つかったら殺される』
『うん。そうだね』
2人でベッドへと仰向けに寝る。
『ヒョウちゃん。手』
そう言うと、ヒョウちゃんの右手が僕の左手に絡まってきた。ぎゅっと握るとヒョウちゃんも握り返してきた。
『おやすみ、アキ』
『おやすみ、ヒョウちゃん』
ヒョウちゃんの温かい体温を体全体に感じながら、安心して目を閉じた。
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