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Out of control ⑦

「昨日、夜うるさかったよなあ?」  涼が不機嫌そうな顔でダイニングチェアにどかっと座った。尚人が手際よく朝食を用意しながら答える。 「ほんと? 俺、熟睡だったから分かんなかった」 「尚人は何があっても起きねぇじゃん」 「まあ、よっぽどのことがないとね」 「そしたら、やっぱり晃良くんだったんだ、うるさかったの」 「……ごめん」 「何してたの?」 「いや……その……黒埼が……」 「は? また、あの人なんかしたわけ?」 「ん……昨日来て」 「え?? 来たって……どうやって?」  尚人が驚いた顔で聞いてきた。 「……合鍵で」 「はあ?? そんなの、いつの間に作ったんだよ、あいつ!!」  涼が眉を寄せて声を荒らげた。 「いや、俺もよく分かんなくて」 「ちゅーか、何しにきたわけ?」 「なんか……サプライズ的なもんだったみたいだけど……」 「は? サプライズ?」  その時。ピンポーン、とインターホンの音が響いた。 「……本人に聞いてくれるか?」  そう言って、晃良は無言でオートロックを解錠した。ついでに玄関の鍵も開けておく。 「おはよー」  有栖がニコニコした顔でリビングに入ってきた。その後を黒埼が続く。晃良は黒埼を軽く睨んで抗議した。 「おい。お前、合鍵勝手に作ったんだから、それ使って入ってきたらいいだろ」 「え? だって、アキちゃんがいる時は、お帰りなさい、って迎えて欲しいじゃん。嫁みたいに」 「……何言ってんの?」 「それより、黒埼くん。サプライズってなんだったの?」 『それより』ってなんだよっ! 涼っ!  と涼に心の中で文句を言うが、それは全く酌み取ってもらえずに会話は勝手に続いた。 「サプライズ?」 「うん。昨日、晃良くんのとこ来たんでしょ? サプライズしに」 「ああ、今日、バレンタインだから。プレゼント置きに来た」 「バレンタイン?」 「ん。バレンタインはほら、恋人同士が愛を確かめ合う日だから」 「恋人じゃねぇし」  そんな晃良の声は無視され更に会話は続く。 「へえ。それって海外ではそうってこと?」 「そう」 「でも、日本だとチョコレートだもんね」  そう言って、有栖が鞄をごそごそさせて、いくつか包みを取り出した。

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