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Out of control ⑧

「はい、これ」  有栖から包みを差し出され条件反射で受け取る。涼と尚人も隣で同じように受け取っていた。涼がちらっとそれぞれの包みを見て、ぼそっと呟く。 「なあ……尚人のだけなんであんなでかいわけ?」  そう言われて尚人の包みを見ると。晃良と涼の包みよりも3倍ぐらい大きい包みを尚人が嬉しそうに抱えていた。 「うわぁ、こんなチョコレートいっぱいくれるの? 嬉しいなぁ」 「ほんと? 喜んでもらえて良かったぁ。いーっぱい愛も込めといたから」 「えーそうなの? そしたら、1個1個味わって食べるね」  ……なに、このバカップルみたいな会話。  この2人。一体何が起きたのだろう。いつの間にかもの凄く色んな意味で距離が縮まっているように見えるのは気のせいだろうか。隣で涼が嫌そうな顔をして一言口にした。 「うざ……」  そこで唐突に黒埼が晃良に尋ねてきた。 「アキちゃんは?」 「は?」 「チョコ。くれないの?」 「……いや、バレンタイン自体すっかり忘れてたし。ちゅーか、なんで俺がお前にあげなきゃなんねぇの。俺、男だし」 「えー、そんなの関係ないって。ジュンだってあげてるじゃん。愛の証しみたいなもんでしょ?」 「いやいや、そんな重いもんじゃないって、チョコは」 「俺は重いと思ってるけど。アキちゃんのチョコ」 「…………」  さらっと、こちらが恥ずかしくなるようなことを言われて言葉に詰まる。そんな2人の会話をニヤニヤと見ているギャラリーにはっと気づいた(涼は何とも言えない顔をしていたが)。その視線に耐えられず、話題を変える。 「黒埼。とりあえずどっか行くか。時間なくなる」 「……どうしたの? アキちゃん。めちゃくちゃ乗り気じゃん、デート」 「いや、消化しないとだから」 「晃良くん、朝ご飯は?」 「俺の分はいい。ジュンが食べたら?」 「いいの?? 久間くんの料理美味しいから嬉しいなぁ」  そんな会話をしつつ、どこに行くか話し合った結果、今回は映画を観に行くことになった。映画の選択肢が多そうなので、商業施設と併設している大きな映画館にする。今日はたまたま尚人も涼も休みだった。 「あ、俺も今日そこ買い物行こうと思ってた」  そう涼が言うので、一緒に乗っていくかと誘ったが、デートの邪魔はしたくないと言われ別々で行くことになった。尚人と有栖は家でDVDでも見てのんびりしたいらしい(ここで涼と目が合ったが、きっと晃良と考えていることは一緒に違いない)。

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