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Ready to fight ⑥
晃良は尚人と一緒にリビングのソファへと腰を下ろした。尚人が少し緊張しているのが伝わってくる。
尚人が父親と再会するのはおそらく数年ぶりだろう。尚人の父親は警視庁の部長クラスを務める筋金入りのキャリアの人間だった。もともと尚人の家系は警察関係の職を持つ者が大多数を占めており、尚人自身もその流れにそって警察官の道を歩み始めたのだ。
ところが、警察官としては優秀な尚人の父親も、『父親』としてはかなりだらしなかったようだ。家に養育費や生活費さえ入れておけばいいだろうと好き勝手をし放題だったという。浮気なんてのは当たり前。尚人の母親は家政婦かなんかのような扱いを受けてきたらしい。
尚人はそんな父親のことが好きではなかった。幼い頃からかなり反発してきたらしい。しかし、何の力もなかった尚人はそんな父親に敵うはずもなかった。父親のいいなりの生活が続いた。
そんなある日、尚人の母親が自殺を図った。尚人が警察官となって数年経った頃だった。幸い、母親の命に別状はなかったが、母親は精神を酷く病んでしまい、入院生活を送ることになってしまった。この時ですら、父親は母親のことが公になるのを気にしてその事実を隠蔽することに必死だった。それが尚人の中で父親という存在を切り捨てるきっかけとなった。
尚人は家を出た。久間家の力を借りればキャリアとしてそのまま出世街道を進んでいけたかもしれない。しかし、尚人はそんなものには興味がないと、一蹴した。そんな尚人に父親が激昂したのは言うまでもない。
勘当を言い渡されても尚人は態度を変えなかった。尚人は自分の道を自分の意志で進み始めた。特殊能力を活かして機動部隊へと入隊し、そこで晃良と出会った。
そして数年後に晃良と一緒に警察を辞めて今に至る。尚人が残してきてしまった弟たちと母親、それと母親の看病をしてくれている祖母のことを心のどこかでいつも気にしているのは知っていた。
状況判断がもうできない母親の元へは最初の数年は見舞いに行っていたが、尚人に見捨てられたと思っている弟たちと鉢合わせしてしまうのを遠慮してここ数年は行けていなかった。その弟たちとも未だに連絡を取れないままでいた。
尚人は事実上、家族を失った。晃良がそれを知った時、自分が尚人の家族になろうと思った。そして、同じように家族の愛に縁がなかった涼とも。
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