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Ready to fight ⑪

 それにしても。涼から少し話は聞いていたが。聞いていたとおり、涼の父親は涼が激しく嫌悪するだけある人間性の持ち主のように見えた。 「涼の父親だからって俺が金貸す義理はないと思うんだけど」 「そんな冷たいこと言うなってぇ。涼の友達なんだろ? そしたら俺の友達でもあるじゃねえか。友達が困っとったら助けるもんだろ?」 「どんな理屈だよ……」 「お前なにしてんだよっ!!」  突然、後方から大きな声がして振り返ると、涼が怒りを露わにした表情で立っていた。丁度仕事が終わって帰ってきたところのようだった。 「お、涼! 久しぶりだなぁ」  涼の父親は涼に対しても晃良の時と同じような愛想笑いを浮かべて片手を上げた。涼は怒りの表情を崩さないままずかずかとこちらに歩いてきた。晃良の前に体を入れて、父親を間近で睨み付ける。 「お前、どうやってここ知った?」 「ん? いやぁ、ちょっと、親戚のほら、和さんに聞いてなぁ……」 「……和さんがお前に教えるわけがない。何したんだよ」 「そんな、人聞きの悪い言い方止めてくれるかぁ? いや、居場所聞こうと思って家行ったら断られたんだけどよ、タンスの引き出しが少し開いてて手紙とか年賀状とか入ってんのが見えてなぁ。いや、和さんに断ってから見ようと思ったんだけどな。奥行ったままなかなか戻ってこないし、つい……「最低だな、お前」」 「なんだとぉ?? 父親に向かってなんだその言い草はぁ!!」  涼の言葉に逆行した父親が声を張り上げて涼の胸ぐらを掴んだ。涼はその手を素早い動きで掴んで捻り上げた。父親が悲鳴を上げる。 「いたたたぁっ!! 何すんだてめえっ!!」 「……俺に気安く触んな」  怒りを込めた声で呟いて、父親を乱暴に突き飛ばした。その勢いで父親は地面に転がるように倒れた。 「失せろ。二度と顔見せんな」  有無を言わせない態度と口調で涼が吐き捨てるように伝えた。父親は涼を睨み付けながらも何も言わずにのそのそと立ち上がった。そのまま背を向けるとゆっくりと歩いて元来た方向へと消えていった。

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