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No matter what ⑳

「それからは、ヒョウガは俺に見向きもしなくなった。連絡さえも途切れた。こんなに相手に冷たい態度を取られたことも初めてだったし、そんな惨めな思いにさせられた元凶の『アキちゃん』が段々憎くなっちゃった」 「俺には関係ないことだろ、そこは」 「関係あるよ。ヒョウガに愛されただけで、お前は憎まれるに値する」 「……バカじゃねえの」  ふっとクリスが笑う。 「だけどさ。お前だって、きっといつかヒョウガに捨てられる」 「…………」 「気づいてないわけじゃないだろ? ヒョウガの中に、いつも『誰か』がいること」  クリスはきっと、その「誰か」が晃良の中に存在することを知らないのだろう。だが、それを説明してやるほどこの男に親切にしてやる気持ちは晃良にはなかった。黙って話の続きを聞く。 「もちろん、俺は愛されてた。だけど、ヒョウガの記憶の中にいつもその『誰か』がいてさ。どうしてもそいつには勝てなかった。もうそれは、ヒョウガの中で絶対的な存在だったんだろうね。悔しいけど、そこだけは変えられなかった」  クリスが意地悪そうな顔で晃良を見た。 「だから。お前だって変えられない。変えられるはずがない。なのに、ヒョウガは相変わらずアキちゃん、アキちゃんって。俺のところに戻ってきてくれない」 「……お前は努力したのか」 「え?」 「変える努力はしたのか」 「したよ。どうして? って、ヒョウガに何度も聞いた。なんで俺じゃ駄目なのかって。何でもするからって」 「……それは変える努力とは言わねえよ」 「……どういう意味だよ」 「ただ、すがって、なんでなんで言ってるだけだろ。それは、努力じゃなくて、ただの我儘。未練だろ。自分が変わろうとしなきゃ、黒崎だって変わるわけない」 「うるさいっ!!」  突然、クリスが声を荒らげた。 「お前に何が分かる。お前だって、俺と一緒じゃん。お前だって、どう足掻いたってヒョウガは変えられない!」 「そうかもな」  晃良はじっとクリスを見返した。 「あいつの中にいるヤツは、最強だから。俺だって気づいてた。あいつが必要なのは本当はそいつで……そいつだけなんじゃないかっって。そいつが戻ったら、今の俺の価値はなくなるかもしれないって」 「だけど。最初から諦めるのはもうやめた。今の俺を好きになってくれるよう、ダメ元でも、自分が納得するまで努力しよって決めた」 「そんなの無理だ」 「そういうネガティブなヤツは黒崎には一生振り向いてもらえないんじゃね?」 「……お前さぁ。自分の今の立場分かってんの?」  クリスの声音が変わった。 「ほんと、ムカつくね、お前。目の前で見て、そう思った。特にその目。俺は間違ったことしてませんみたいな顔して。ヒョウガだけじゃない。他の周りのやつらもお前を可愛がっちゃってさ。自然に相手の懐入るみたいなそういう感じ、反吐が出る」 「……嫉妬か」 「……は?」 「そういうのを、嫉妬って言うんだろ」

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