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No matter what ㉑
クリスが数秒、晃良をじっと睨んで黙った。どうやら地雷を踏んでしまったらしい。
「……ちょっと脅かして、ヒョウガから手を引かせるつもりだったけど。気が変わったかも」
「……どうするつもりだ」
「ヒョウガはさぁ。あっさりした性格だから。お前が他のヤツのもんになったらきっと興味失うと思うんだよね。ほら、傷ものなんて、きっと要らないじゃん? お前に飽きたら、俺のところに戻ってきてくれるし」
「いや、俺、別に経験ないわけじゃないんだけど」
「そういう意味じゃないんだって。『ヒョウガのものである今のお前』が他のヤツのもんになったら、ヒョウガも興ざめするでしょってこと」
「…………」
ほら、せっかく買ったお気に入りのコップが欠けちゃったみたいな? そう付け加えると、浴室の方へ顔を向けた。
「いいよー」
そうクリスが声を上げると、浴室のドアが開いて男が3人出てきた。3人とも体格がいい。ニヤニヤと晃良を品定めするように眺める。どう見ても、品のいい感じはしなかった。
「こいつらに犯されちゃってよ。言っておくけど、助けはこないよ。もちろん、ヒョウガも。今頃ヒョウガは大統領主催のパーティーに出てるはずだから」
「…………」
「だからさぁ。ヤられてるとこ、可愛く動画に撮ってヒョウガに送ってあげるよ」
「……断る」
「はあ? だから、お前にそんな選択権はないんだって!」
「……さっきからごちゃごちゃ、本当にうるさいヤツだな」
「……は?」
「俺がやめてって泣き叫ぶとでも思ったのか? 許して下さいって土下座でもするとでも思ったのか?」
「…………」
「言っただろ。俺は努力してんだよ。守られるだけの、ひ弱な昔の俺とは違う。自分で自分を守るし、なんなら黒崎だって守ってやるぐらいの自信はあるわ」
「……何言ってんの?」
「それが、昔の俺に唯一勝てるとこだから。こんなこと、黒崎に頼らなくてもなんとかしてやるよ」
「…………」
「あとなぁ、黒崎があっさりした性格だなんだ言ってたけど。お前、ぜんっぜん分かってねえな、あいつのこと。あんな嫉妬深い、粘着質な変態野郎があっさりなわけないだろ。あいつの機嫌損ねたら最後、墓場までブチブチ文句言われて面倒くさいって」
「……意味分かんないんだけど」
「それだけ黒崎はお前に心開いてなかったてことだろ。あいつが素を見せてなかったってことだろうが」
「……お前、ムカつく」
ちらっとクリスが男たちに合図を送る。男たちが一斉に晃良へと向かってきた。先ほどは暗闇で見えなかったが、この男たちは晃良が拉致された際に襲ってきた男たちだと確信する。
「リベンジだな」
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