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No matter what ㉒
晃良はベッドに背中から寝転がり思いっきり両脚を天井に持ち上げた。反動をつけて一気に脚を1人の男の顔を目掛けて振り落とす。両脚のかかとが見事に命中した。男の鼻から血が噴き出す。
「おわああっ」
男が顔を両手で抱えて床に崩れた。晃良はそのまま立ち上がる。はらりと、後ろ手に縛られていた紐が落ちた。クリスが目を見開いた。
「なんで……?」
「こんなことだろうと思うて、忍ばせておいたんだって」
そう言って、晃良は握っていたホテルのアメニティでよく目にする髭剃 り用のカミソリを見せた。キャップを付けた状態のまま、ジーンズの後ろから下着の内側に忍ばせておいたのだった。
クリスとの話で時間を稼ぎ、その間にビニール紐を少しずつ後ろ手に切っていった。万が一捕まってしまった時、切れるものを所持していた場合にはこの方法はよく取られる。ない場合にも手と体の筋肉を上手く使って紐をほどく方法もある。そういう訓練を受けている晃良たちにはこれくらいのことは想定内だし、簡単に対処もできた。
大体、晃良が気を失った時点でボディーチェックもせずに縛り上げるなんて、この連中が素人だということを証明しているようなものではないか。
「てめえっ」
男たちが晃良へ勢いよく飛びかかってきた。視界を奪われてなければ、素人3人ぐらいの相手は晃良にとって大したことはなかった。
男たちの攻撃を素早くかわしながら、一発で仕留めていく。あっという間に床にのびた3体の塊が出来上がった。
そこでふと、クリスの存在を忘れていたことに気づく。と同時に、視界の隅に素早く動く影を認めた。一瞬で空気がピリッとしたものに変わる。
「……止めといた方がいいんじゃねえの?」
どこに忍ばせておいたのか。どす黒く光った銃口が真っ直ぐに晃良を狙っていた。それを握るクリスの手は小刻みに震えている。
「震える手で打たれて急所外れて苦しむの嫌やねんけど」
「うるさいっ!! 苦しめばいいだろ!!」
はあっ、と心の中で溜息を吐く。この男はどこまで根性が腐っているのか。
さてどうしようかともの凄い形相のクリスを眺めながら考えていると。
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