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No matter what ㉙

「……広すぎねえ? これ」  部屋に一歩入った途端。晃良の目の前には2人で泊まるにはスペースがありすぎる豪華なリビングルームが広がっていた。寝室はもちろん別であり、この豪華さだと、バスルームも相当な広さがあるのではないかと推測できた。  きょろきょろと物珍しく部屋を見回していると。ぐいっと腕を引っ張られた。すぽっと黒崎の胸に後ろから収まる。と、同時に、黒崎の唇が晃良の首筋を()って、黒崎の手が服の中に入ってくる。 「ん……ちょ、待って。まだ、準備もなにもできてないから」 「我慢できない」 「待てって。とりあえずシャワー浴びさせて」 「えー」 「お前との初めてだから。ちゃんとしたい」 「……なんてこと言うの、アキちゃん」  そんなこと言われたらダメだって言えないじゃん。そう言って、黒崎が渋々と晃良を解放した。 「あ、そしたら、一緒に入ろ」 「ダメ。準備自分でしたいし。それに、一緒に入ったらお前、止まらないだろ、そこで」 「いいじゃん。それならそれで」 「だから。そんながっついてヤらなくても、時間もあるし、ゆっくりヤったらいいじゃん」 「……俺、そんながっついてる?」 「そういうわけじゃないけど」  ふふっと笑って、黒崎を見上げる。 「大事に事を進めたいな思って。せっかくだし」 「……どうしたの? アキちゃん。今日、ほんと、めちゃくちゃ可愛いんだけど」 「そうか? とりあえず、行ってくるから。待ってて」  そう言って、バスルームがあるだろう方向へと歩き出す。アキちゃん、なるべく早く帰ってきてぇ、という黒崎の声を背中に受けながら。  最後までヤるのは随分久しぶりだったので、念入りに準備をしてからバスルームを出た。備え付けのバスローブで体を包むと、リビングへ戻る。黒崎がソファに座って携帯を弄っている姿が見えた。晃良の気配に気づくと、振り返る。 「お前もシャワー浴びてきたら?」 「そうだな。そうしようかな。向こうからずっと風呂も入ってないし」  そう言って、黒崎がソファから立ち上がった。スタスタと晃良へと近付いてきて、その流れでキスをされた。きょとんとして晃良が黒崎を見上げる。黒崎がにやっと笑った。 「俺がシャワーしてる間に逃げないでね」 「……逃げるか、バカ」  じゃ、急いで入ってくるわーと、黒崎がバスルームに消えていった。その途端、晃良に緊張が生まれる。

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