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This is the moment ⑱

「やっと、2人になれた~」  黒崎が嬉しそうに運転席で言った。 「なに言ってんだよ。本当はジュンに悪いと思ってんだろ?」 「……別に」 「素直じゃねーな。後で謝ったら?」 「え~、だってぇ~……」 「だってぇ~、じゃねぇだろ。ちゃんと謝れる時に謝っとけよ。後悔するぞ」 「……うん」  前回とは違い、降り続く雨の中のドライブとなった。残念ながら今日は景色も楽しめそうもない。それでも黒崎と2人、FMラジオを聞きながら時々会話を交わして、ついでにお菓子もつまんでまったりと過ごしながら進むドライブは、晃良にとってそれなりに楽しいものとなった。  雨のため予定より少しかかって施設へと到着した。設けられた駐車場に車を停める。 「黒崎。どうする? 一緒に来るか?」 「そうだなぁ。そしたら行こうかな」 「先生、びっくりするな、きっと」 「そうだね」  2人で施設のゲートへと近付いていくと、事務所のような部屋の中に、見覚えのある老人警備員の姿があった。 「こんにちは」 「ああ、この前の……」 「覚えていてくれたんですか?」 「年老いてますけど、記憶力だけは健在ですから」  そう言って、その警備員はニコリと笑った。事情を説明すると、すぐに例の元施設の女性職員へ連絡を取ってくれた。 「中へどうぞ。この前の応接室でお会いできるそうですので」 「分かりました。ありがとうございます」  警備員にお礼を言って、黒崎と施設へ入る。初めて施設へ足を踏み入れた黒崎が周りを見ながら呟いた。 「綺麗な施設だな」 「まあ、建ってそんな経ってないだろうからな」 「俺らの時とは大違いだわ」 「そうだったか? 俺、断片的にしか覚えてないからなぁ。だけど、確かに古い建物だった気がする」  こういう時に。罪悪感が生まれるのは変わらない。未だに全て思い出せていない申し訳なさがある。黒崎は大して気にも留めてない様子だったが。それも、晃良が罪悪感を抱かないようにと配慮してくれてのことだと分かっていた。

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