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第51話 組み手の勝者は誰?
さて、燃えてきたぞ~!僕本気になる戦いは嫌いじゃないよ。
僕はちょっと困った顔のユア様と向き直った。ユア様は深呼吸をすると、急に真剣な顔でこちらに構えた。
お?隙がない!何だか感覚的に僕が入り込む隙がないという感じだ。
ユア様は僕に何度も掴み掛かろうとするけれど、僕も必死だ。
どうせなら勝ってやる!ワンコに負けるな、僕!
僕は捕まっては逃げを繰り返してたけれど、体力がないので息が上がってきてしまった。
苦しげにもがきながら、逃げ出そうとユア様を睨みつけると少し手が緩んだ気がして、僕はするりと移動する弾みに何か踏んでしまった。
そこには背中を丸めたユア様が…。あ、もしかして踏んじゃった?ユア様のソレ…。ゴメンちゃい。
結局僕の反則負けだった。ワザと踏んでないからねー。
クラスメイト達はなぜか顔を赤らめて僕と目を合わせてくれなかった。
アーサー達は呆れた顔で僕とユア様にお疲れさましてくれたけれど。
君たちも顔赤いけどね!見てただけのくせしてー。
その日以降、僕に『キン踏みの天使』という二つ名が出来たのだった…。
その夜、僕とユア様はいつもの様に交代でシャワーを浴びた。
二人部屋は案外広くて入り口の正面にソファや大きめのテーブルセット、その奥にシャワールームがある。
それを挟んで左右にそれぞれのベッドルームがあるんだ。
さすが貴族の寮だよね。至れり尽せりって感じ。
寂しがり屋の僕はベッドルームの扉を開けっ放しにしてる事が多いから、ユア様に注意されたり、閉められたりしちゃう。
あんまり寂しい時はユア様のベッドルームに押しかけて一緒にゴロゴロするんだけど、眠る前には追い出されちゃうんだよね。
お兄様みたいに添い寝してくれても良いのにね。
一度一緒に朝まで寝ようって言ったら、凄い怖い顔で説教されたよ。ハハハ。
僕はシャワー上がりにユア様のベッドに転がって待っていた。
タオルで髪を拭きながら戻ってきたユア様は、僕の姿を横目で見ながらベッドに腰掛けた。
「ねぇ、今日僕ユア様の大事なソレ踏んじゃったでしょ?…大丈夫だった?」
そう、とっても気になってたんだ。あそこはぶつけたりすると痛いからねー。ユア様うずくまってたし…。
ユア様はちょっと考え込んだ後ゆっくりと向き直ると、僕の顔を真っ直ぐ見て言った。
「…大丈夫じゃないかもしれない。リオン様、確かめてくれない?」
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