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第63話 白騎士団と泳ぎの演習

気まずかったユアと仲直りした僕は、すっかり気分も良くなってご機嫌だった。 アーサーとキースにはユアから話をしたらしい。 「もう色々心配かけるなよ?僕たちお前らに振り回されて大変だったんだから。リオンはユアだけ振り回してろ?」 キースがそう言って僕の頭を撫でると、アーサーもニヤニヤと笑った。 何か感じ悪いなぁ。なんだあのアーサーの笑い方。まぁ反省はしてるけどね。 それからしばらく経って、僕は暑い夏の日差しの中に居た。 お父様に頼まれて、というか白騎士団に正式に頼まれて僕はここに来ていた。 自然の形状をうまく活かした水場が気持ち良さげにキラキラと眼下に広がっている。 ガヤガヤと20人ぐらいの若手の騎士達が騎士服を脱いで腿までの騎士ズボンのようなものを身につけて並び始めた。 僕も設置テントの中で短い騎士ズボンを履いたのだがいかんせん大きい。 「やっぱりダメか…。」 お父様は険しい表情で腕組みして考え込んでいた。 僕はそんな事もあろうかと武術の授業で使っている伸びるズボンを腿の所で切ったものを履いてみた。 この演習が決まった時にセブに念のために頼んでおいたものだ。 「まぁ、それしかないだろうな。しかし可愛いリオン、…上半身は裸なのかい?」 「え?泳ぐんですよね?着衣はちょっと無理です。濡れると重くなってしまいます。」 「…っく。では水の中に入るまでこのローブを羽織ってなさい。では行こうか。もう皆並んでいる頃だ。」 お父様は急にキリッと騎士団長の顔になったので、僕は何だか可笑しくなってクスクス笑った。 僕が顔に笑顔を残したままお父様の後をついて整列している騎士達の前に出ていくと、一斉に視線が向いたので僕は怖く感じてギクっとしてしまった。 お父様はこちらをチラッと見ると咳払いをひとつした。 前に立っていた副団長が、騎士団長の令息が泳ぎの手本を見せること、実際やって不明な点は令息がアドバイスしてくれるという事、令息に不埒な真似をしない事など注意事項を与えた。 何か最後のやつ怖い事言ってた気がする…。 最後に僕から挨拶をとの話だったので、僕は意を決して進み出た。 「皆さん、リオネルン スペードです。皆さんご存知のように、僕は人間ですが人魚のように泳ぐことができます。 今日は皆さんの訓練の助けになれれば幸いです。宜しくお願いします。」 騎士達がザワっと笑ったのでその場の空気が柔らかくなって、僕はやっと緊張を解いた。 その頃には僕は泳ぐのが楽しみになって意気揚々と皆と水際まで歩き進んだ。 僕はローブを脱ぐと岩の上から水飛沫を上げて飛び込んだ。

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