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第73話 朝のルーティン
シャワーを浴びたら昔から僕のために調合された香油をささっと塗る。
僕は面倒だったけれど、セブがうるさく言うので嫌々塗っていたんだけど、もうすっかり習慣になってしまった。
最近お気に入りのシルキーなボンクスを履いて、さらりとした白いズボンを穿く。
襟のないシャツを着込んだら、ジャケットを羽織って、片耳に髪をかけて完成だ。
姿見に写るのは以前よりグッと背も伸びて、大人びて見える高等貴族学院生の僕だ。
制服ひとつで見え方が違うのか、それとも僕自身が成長したせいなのかは分からないけれど、この姿は気に入っている。
去年誕生日にリュード兄様が贈ってくれた、アメジストの意匠を凝らした細いブレスレットは、気に入ってるのでお守りがわりにいつもはめている。
反対に僕は兄様に、お母様と相談して青い綺麗な石のピアスを片耳分贈った。
手紙には随分喜んでた様だったけれど…。
あと数日もすると三年ぶりに会えるのが、ほんと嬉しくてたまらない。
結局兄様は向こうの国の高等貴族院を卒業して、研究室に在籍しつつキリウム王子の外交補佐などして忙しく過ごしていた様だ。
しかし3年会えないのは、信じられないくらい長い期間だ。
お互いに学業で忙しかったから何とかなったものの、小さい頃の暇な僕だったら耐えられただろうか?
そんな事を考えつつ襟に一年の印である金の星を確認した。この星は学年が上がる毎に追加されていく。
「リオン、用意は出来たかい?」
ドアをノックして登場したのはもはや腐れ縁的なユアだ。
ユアは僕以上にスクスク成長して、今や180cmをゆうに超えてきてる。まだ伸びそうだ。
「リオンは選択授業に武術を取ったのかい?」
「うーん、先生には体術が得意だから取ったらって勧められたんだけどね、まぁ体格も随分武術を選ぶ奴らとは違っちゃったからやめたんだ。」
「良かった。そうじゃなかったら俺、気が気じゃなかったかもしれない…。」
「ふふ。ユアはヤキモチ焼きだなぁ。いつもこんなに俺たちくっついてるのに、まだ足りないの?」
僕はユアの首にスルリと片腕を回すと、伸び上がって口の端に唇をゆっくり押し当てた。
ユアはそっと息を吐き出すと、僕を両腕で優しく抱きしめて言った。
「悪戯なリオンにはお仕置きが必要だな。」
そして僕の口はユアの舌で息が荒げるほどにお仕置きされたんだ。
「…はぁっ。やりすぎ。」
顔を赤くした僕の髪や服を整えるとユアは嬉しそうにドアの外に連れ出しながら言った。
「リオンが可愛すぎるのが悪い。」
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