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第94話 第二王子殿下会いましょう

僕はヘンリック様と王宮の執務室で殿下をお待ちしていた。 まだ小言を言い足りなさそうなセブに見送られて、お兄様とお父様と王宮に来た僕は、ヘンリック様に預けられた。 お兄様の甘々なお別れにはヘンリック様も苦笑いしていたのが非常に申し訳なかった…。 研究室でヘンリック様が度々王宮での仕事の話をしてくれていたので、僕は興味津々で執務室を見渡した。 扉を開けて直ぐのスペースには数人分の補佐員席があり、奥まった先に見えるのが応接室、真向かいの扉の向こうが殿下専用の執務室らしかった。 さすが王宮だけあって、執務室といえども豪奢な作りだったけれど、殿下のお人柄なのか色合いがシックで落ち着いた色合いでまとめてあり、居心地が良かった。 「リオン、もう直ぐ殿下がいらっしゃるけれど、気さくなお人柄だから緊張はしなくて大丈夫だよ。」 王宮に入った時から何だか衆人環視の様で、落ち着かなかった僕は顔が強張っていたらしい。 執務室へ入った際には数人の補佐員の方々にじっと見られてしまい居た堪れなくなっていた。 ヘンリック様が取りなして下さったお陰で、すぐに変な空気は溶けたのだけど…。 「僕、今日殿下にお会い出来るのがとても楽しみだったんです。 色々と数術を活かした施策のお考えを直接お聞きしたいと思ってましたから。」 僕が興奮してヘンリック様に話していると後ろから場の空気を震わす様な声が響いた。 「それは誇らしい。私も教授の秘蔵っ子、リオネルン スペードに是非会いたいと思っていたのだ。」 「デプリオン殿下、ご機嫌麗しく存じます。」 ヘンリック様が後ろを振り返って、腕を胸の下に掲げて挨拶をした。 僕も慌てて俯き同じように腕を掲げてご挨拶した。 「デプリオン殿下にあられましてはご機嫌麗しく存じます。 スペード伯爵の子、リオネルン スペードです。お初にお目にかかります。 今日はこちらに呼んで頂き誠にありがとうございます。」 「良い良い、硬い挨拶はそこまで。ここではざっくばらんに話すことにしよう。 さあ、こちらでリオネルンと話をさせてくれ。しょうがないからヘンリックも一緒に居ても良いぞ。」 第二王子であるデプリオン殿下はクスクス笑うと応接室へ向かいながら僕たちに話しかけた。 デプリオン殿下は濃い輝く金色の髪に深いエメラルド色の瞳の、意志の強い顔つきの美丈夫だった。 スラリとした長い手足は馬に跨った騎士としても映えるだろうな…そんな事を考えながら僕は凝視してたのかもしれない。 「リオネルン、人魚ともあろう者が私に見惚れてしまったのかい?」

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