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第102話 実習の準備
実習は来週明けとの事で、僕たちは準備に勤しんだ。
学術科の僕たちでも実習や遠征はあるので、ひと通りの準備は出来る様に貴族学院の頃に身につけさせられている。
今回は初めての屋外での宿泊という事で、慣れない僕たちは不安と期待に心を弾ませていた。
「ユア、準備はこれで良いかな?」
ユアは僕の手荷物を見ると顔を顰めた。
「何でこんなに荷物が少ないんだ。これじゃ困るだろ?」
「んー、そうかなぁ?だって寝る時はユアが抱きしめてくれるんでしょ?だからローブで十分だと思って。」
ユアは僕の顔を真顔で見つめてため息をついた。
「…リオン、頼むからみんなの前でそうゆう事言わないでくれよ?
この前キースにたっぷり説教食らったばかりなんだよ…。あれはかなりしんどかったし、正直反省した…。
リオンは分かってないようだけど、屋外実習は基本、皆で行動だから場合によっては数人で雑魚寝もある。
ローブで横になるなんてあり得ないし、そんなの俺が許さないし。
リオンの色っぽい姿を他の奴らに見せるなんてありえない!…やっぱりリオンは不参加でいいんじゃないか?
スペード伯爵も参加できないから、リオンが参加するのは心配だっておっしゃられてたぞ?」
そうなんだ。お父様は自分が副団長に参加を止められちゃったからって、僕も行かなくてイイとか言っちゃって。
いくら心配だからってそれはないよね?僕こうゆうのに目がないの知ってるくせに!
「絶対参加するから!こんな楽しそうなの行かない手はないよ。じゃあ、もう一度荷物チェックお願い。」
結局ブツブツ言いながらも、ユアは僕の荷物を作り直してくれた。
何だか服が多くなっちゃったけれど、行けなくなるよりマシだ。全く心配性だな。
僕がイライラ、ワクワクと百面相しながら荷物の重さを確かめていると、ユアはクスクス笑いながら僕を後ろから抱きしめた。
「リオンが楽しそうで良かった。それに今回は運良く一緒に参加出来て本当によかった。もしそうじゃなかったら、どんなに心配か。」
「そんなに危険な場所じゃないでしょ?学校の実習なんだから。」
「…行ってみないと分からないけど、たぶん大丈夫だと思う…。
でも場所だけじゃなくて、他の奴らと一緒に無防備で愛らしいリオンが紛れ込むのが心配だってこと。」
「キースも居るよ?」
「キースが居なかったら行かせない。」
僕はユアの腕の中で身体を回転してユアに向き直ると、ユアの顔を両手で挟んで囁いた。
「ユアは僕のこと好きだから、そんな意地悪言わないでしょう?」
そして困ったように微笑むユアとゆっくり口づけたんだ。
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