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第103話 馬車の中

僕たちは馬車で揺られていた。正直限界だった…お尻が。はぁ。 僕の馬車には、キースとニ年のマキシムとカーク先輩、三年のロナルド先輩が乗っていた。この五人が僕の実習グループだ。 マキシムとカーク先輩は従兄弟同士らしくて、そう言われてみるとよく似ていた。 仲が良いのか悪いのか言いたいことを言い合っているので、僕はおかしくって何度も笑いを堪える事が出来なかった。 ロナルド先輩はアーサーのような穏やかなまとめ役という感じで、僕は直ぐに懐いてしまった。 「ロナルド先輩はフィザード伯爵領ですよね?あそこは高地も近いので鉱物も沢山取れるのではありませんか?」 ロナルド先輩は僕を興味深そうに眺めるとニッコリ笑って言った。 「リオン君は麗しいだけじゃなくて、博識なんだね。 僕の地元は確かに鉱物が良く採れるんだ。最近は鉄という鉱物が出るようになったので、領地も期待しているのさ。」 「そうなんですね?鉄だと剣や武具に使うと特に硬いので非常に優れたものになりますね。」 僕がそう言うと先輩は目を見開いて僕を見た。 「リオン君、君は鉄の剣を知っているのかい?まだほとんど知っているひとがいないのだけれど。」 「そうなんですか?僕、なぜ知っていたんだろう。誰かに聞いたんだろうか?」 キースは僕の顔を見ると呆れたように言った。 「リオンの得意なやつですよ。 リオンは時々皆が当然知ってるはずという感じで、突拍子もない事言い出す事が昔からあるんです、ロナルド先輩。 でも本人は全く自覚がなく言うもんだから、周囲を混乱させるんです。」 「…そうなのか。リオン君には遠見というより、先見の力があるのかもしれない。」 馬車の中はロナルド先輩の言葉を聞き漏らさない様に静まり返った。 「皆は聞いたことはないかい?前回、先見の力を持つ者が現れたのは200年前だった。 その者は、多くの新しい知恵をこの世にもたらしたんだ。それによりこの世界は大きく発展した。 ただし、その者に関しての情報は他国に情報が漏れるのを嫌った施政者により、秘密裏にされた。 僕はこの話を御伽噺と受け止めていたんだけど、僕の領地の先祖がその事に関わっていたらしい。 隠された地下倉庫に古い日記が残されていたんだ。」 マキシム先輩が尋ねた。 「ロナルド先輩はその日記を読んだんですか?」 「ああ、実は前回帰省した時に地下倉庫を発見した兄に見せてもらったんだ。 その先見の賢者は他所から来たわけでもないし、生まれも育ちもこの国の貴族のひとりだった。 だが、成長するにつれ多くの他の者にない智慧を周囲に授け始めて先見の賢者と呼ばれる様になったんだ。 ただ、その事が知れ渡る前に施政者により守護され、隠蔽された。 だから多くの人にその先見の力を知られる事はなかった様だ。」 ロナルド先輩は薄い茶色の瞳を鋭く煌めかせ僕を見つめた。

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